【4/27(土)王様のブランチにはかり屋が登場!】異なる“本物”のかけ算が生んだ「本物が集う場所」。過去を未来に手渡す“はかり屋”誕生秘話

草加、越谷エリアの“ベッドタウンに寄り添う場所”に。ーー草加初のコワーキングスペース「TORINO’S(トリノス)」誕生のエピソード“ゼロ”【後編】

今年1月、越谷のお隣、草加市に初のコワーキングスペース「TORINO’S(トリノス)」がオープン。元々は鉄工所の倉庫だったが、リノベーションしてオシャレなワークスペースへと生まれ変わった。

前編では、TORINO’S誕生の舞台裏を中心に伺った。後編では、コワーキングスペースを通じて提供したい価値についてや、工夫されていることはなんなのか。そして、川畑さんが考えるベッドタウンの未来について綴っていく。

そこから、常に未来を見据える川畑さん独自の視点と地域への想いが見えてきた。

 川畑喜史(かわばたのぶふみ)

ネスティング株式会社代表取締役。草加市生まれ、草加育ち。現在は、都内の企業で執行役員として、不動産コンサルと行政書士を務める傍ら、草加市初のコワーキングスペース「TORINO’S(トリノス)」を運営。

   聞き手 青野祐治(あおのゆうじ)

ローカルストーリーメディア「KOSHIGAYAZINE」へんしゅうちょー。1987年越谷生まれ、越谷育ち。越谷西高→青山学院大学卒。 広告会社やフリーランス、スタートアップでWeb編集、スピーチライティング、PRなどを経験。 大の巨人ファン。

コワーキングスペースの家具はどうしよう。「少額予算」という制約を突破したアイデア

川畑:手付かずだった倉庫の片付けが終わったあとは、工事をどうしようと。職人は誰もいないんですよ、トリノスを設立したメンバー4人の中に。

青野:施工する人がいないと。

川畑:はい。普通に、業者さんを入れると、すごく高いんですよね。

我々で家具一式を揃えるのは大変なことです。それほど経済的にゆとりがあるチームではなかったので、そのなかでどうしようということを考えていったんですね。

議論するなかでメンバーの1人である一級建築士が、いいアイデアを思いついたんです。

それは、雑貨屋さんや古家具屋さんなどに声をかけて、商品として置いてもらったらどうか、というもの。もう、夜のうちにネットでお店を調べてアウトレットチアーズさんという雑貨屋さんにメールしたそうなんですよ。

そうしたら早速反応があって。そんなことを言ってくる人はいないということで、ちょっと面白そうだからと話しに乗ってくれたんです。

青野:なるほど、こちらにある家具は、ほぼ売り物なんですね。たしかに実感できますしね、家具の良さを。

気に入ったら買えるという仕組みは秀逸です。トリノスさん、家具屋さん、そしてお客さんの三方よしな仕組みですね。

川畑:そうですね。だから、家具を我々で揃えずにすんだという。

しかも売れたら、全額チアーズさんに還元されるんです。チアーズさんは、草加と錦糸町にお店を出しているんですけど、草加市内に倉庫があって。

倉庫に眠っているものを持ってくるだけで良いので、そこまで負担にならないんですよね。それで宣伝にもなりますし、チアーズさんにも喜んでいただいています。

基本的に、プロの職人にお願いしたのは、給排水と電気工事です。そこは問題があるとまずいので。それ以外は、ほぼDIYでやったんです。

青野:すごい。参考になると言いますか、僕も越谷でコワーキングをやってみたいなという夢があるので(笑)

川畑:全部プロにお任せして、いちからこういったものを買いそろえていったら、もう本当に、お金がいくらあっても足らないと思うので。

青野:予算の少なさをアイデアで突破できたという。それで、トリノスが完成したのはいつくらいなんですか?

川畑:完成したのは、2019年の1月です。

できれば2018年内にオープンさせたいなと思っていたんですけど。なかなか…。それぞれ、仕事もしていますしその中で会える時間を作って、ここを進めていたので。

なので、年内は難しくて。どうせならちゃんと、スタートを切れるところまでやろうということで1月7日から1週間プレオープンしたんです。

そのプレオープンというのは、スタッフさんにオペーレーションに慣れていただくための期間でもありました。おかげさまで、スタッフさんには、募集の段階から恵まれていたんです。

いまでは、11名の方に登録いただいて。しかもオール草加のスタッフです。

ビジネスマンだけでなく、子育て中のママにも利用していただくために

青野:なるほど、まさに地域が一丸となっている感じが伝わりますね。実際に、こちらにいらっしゃる方は、フリーランスの方が多いんですか?それとも会社員の方なんでしょうか?

川畑:実際うちに入会していただいている方は、草加で事業を行われている経営者さんや士業の方、それと都内勤務のサラリーマンの方が中心ですね。

青野:なるほど。どういった活用され方が多いんでしょうか?

お店などでは集中がしづらい、パソコン作業ですね。例えば、飲食店を経営されている方なら、新メニューの編集や経理作業とか、そういうのをここでされていたりします。

また、会社員の方は、夜の時間帯に利用されるケースが多いです。日中は都心で働いている方が、帰りにここに寄って、集中して作業したり、という形で。

あとは、都内の会社に勤務はしているものの、在宅ワークがOKな方に使っていただいていたりもします。他にも、独立したての方も会員で使っていらっしゃいますね。

青野:ちなみに、利用者層を広げるために工夫された点などはあるんですか?

川畑:はい。トリノスでは、ビジネスマンはもちろん、女性、特に主婦層の方にも来ていただきたいなと思ったんですよね。

草加でコワーキングを始めるとなったときに、はっきり言うと、なかなか地元の方はイメージしづらいんじゃないかと。草加市では初めてできた施設なので。

都内にあるコワーキングの形を、そのまま草加に持ってきて地元の方が使うか、というとそういう方ってあまりいらっしゃらないのかなと思ったんですよね。

だとすると、女性もターゲットにしないとダメだろうなと。

青野:ビジネスマンのみではなくて、客層の間口を広げる必要があると。

川畑:ええ。というのは、この周辺に住んでいる人の大半は、仕事をしに都内に行ってしまいますからね。そうなると、ビジネスマンは昼間、いないんですよね。

だから、日中にこの周辺にいらっしゃる方は?と考えると、お子さんを預け終わった奥様方やママさん。それでもいわゆる、ママが集まって、寄り道して、わちゃわちゃするカフェとか、ファミレスとかには、したくなかったんです。

なので、趣味で物作りやハンドメイドをしているような方たちをスタッフとして集めて午前中に、ここで「ものづくりワークショップ」をしてもらうことで、そういうクリエイティブな繋がりの人たちを集めようという作戦に出たんです。

青野:なるほど。

川畑:なので、トリノスのスタッフの11人いるうちの半数は、クリエイターさんなんです。

青野:ほう。アクセサリーなどをつくられる方ですね。

川畑:はい。ハンドメイドの作品をつくられるクリエイターをはじめ、他にもミュージシャンの方もいらっしゃったりします。

そういったクリエイターさんが、スタッフとして受付に入っていただいて、自分が座っているときは、自分のものをカウンターで販売できるような仕組みにもしているんです。

青野:なるほど。スタッフとして入っていただきながら、お小遣い稼ぎにもなりますし、新しい利用者も増えそうですし、Win-winな発想ですね。色々なワークショップが開催されていそうです。

地域経済が潤う、もうひとつの工夫

川畑:そうですね。例えば、女性用の道具の小物入れをつくろうとか。あと、ご祝儀袋の水引糸を使ったアクセサリーや、ミニチュア道具のワークショップなどもありますね。

もう一つ、工夫した点があるんです。ここは飲食店ではないので、利用者の方の食事はどうしようかなと思ったんですよね。厨房もないですし、飲食業の保健所の許可も取っていないので、こちらで食事を提供することが出来ないと。

そうなると、「出前」がいいかなと思ったんですよね。

青野:都内では、Uber Eatsなどの宅配サービスも流行っていたりしますもんね。

川畑:いえ、そういった今風のことを思いついたわけではないんです(笑)。もう少し昔ながらの方法がいいかなと。

例えば、雀荘などで、ちょっとコーヒーを飲みたいないうときに、下の喫茶店から頼んだり、他には近所のラーメン屋さんから、出前がとれるようなイメージですね。それをここでやろうと思ったんですね。

青野:それなら周辺地域も潤いますもんね。

川畑:そうですね。それでどうせご協力していただくなら、おしゃれなお店が良いかなと思って。まず、ここから一番近い、カフェのお店や創作イタリアン料理のお店から、出前が取れるような仕組みにもしているんです。

青野:面白いですね!

「トリノス」を、もっと身近な存在にしていきたい

青野:最後に。これからの展望について教えていただけますか。

川畑:オープンして2ヶ月ほどが経ちました。やってみて思ったのは、草加のコワーキングスペースとして、地域の方が必要とする場所になるのは簡単ではないな、ということです

というのは、オープン前まで、戦略的にFacebookなどでも告知をしていって。スタッフ採用も順調。オープニングレセプション40人。これはうまくやっていけるだろうと思っていたんです。

でも蓋を開けてみたら、会員の方がぜんぜん増えないんですよ。増えないとやっぱり、お金も出ていく一方で、この先どうする、と。すごい不安な2月を過ごして…。

どうしようかと4人の中でも、いろいろ話し合って。値段を安くして、とにかく使ってくれ、という方向性にしていくのか。

いや、それだと、目的もなく来る方が増えてしまって、来ていただきたい方が使いづらい場所になってしまい、コワーキングスペースの意味を成さなくなる。

でも、そんなときに「ここは踏ん張りどきだからこだわったほうが良い」、と言ってくれた役員の方がいて。たしかにそうだなと。

逆に僕たちが来ていただきたいと思っている人たちが、「なんで来ないのか、どうしたら来るのか」を突き詰めたほうが良い、という話になって。今、いろんな策を考えているところなんです。

そのうちの一つが、トリノスの日の飲み会。人間関係の温度をあっためるための飲み会です。

毎月8のつく日ある、8と18と28日に、ここで飲む。と。8の日というのは、うちの会社の設立日が8月8日なんですね。その語呂で。

青野:末広がり。縁起がいいですね。

川畑:あとは、回数券もつくりました。非会員の方でも利用できるように、ドロップイン(一日のみの利用)も可能にしています。

その場合、通常のドロップインとしては2,000円の利用料をいただいているんですね。1日いればいいかもしれないですけど、数時間だけの利用だと割高に感じますよね。

それだったら、先に回数券を買っていただいて。必要な時間分だけ使っていただけたらと。

青野:なるほど。会員にならずとも、気軽に利用できるための取り組みということですね。

川畑:はい。なので、月額会員の料金体系も、午前中とお昼と夜でそれぞれ変えていて。オールタイムはオールタイムであるんですが、オールタイムは草加で事業をしている人に使っていただきたいなと。

そして午前中は、奥様のコアタイム。料金設定も低くしています。そして夜は、都内にお勤めの方に利用いただきたいなと。

草加、越谷、春日部。このエリアの「ベッドタウンに生きる人」が集まる場を目指したい

青野:まさにローカライズという形で、草加にお住まいの方々のライフスタイルに最適化していきたいと。

川畑:そうですね。ただ、この使い方が広まれば、草加だけの話ではなくて、同じベッドタウンである越谷や春日部の方にも利用いただけるんではないかと思うんですよね。

青野:まさに、そうですね。

川畑:なので、「草加にこんなところが出来たらしいよ」ということで、東武線沿線の方にもぜひ、使っていただきたいなと。

青野:まさに、僕もそこだと思っていて。割りと、草加は草加、越谷は越谷、春日部は春日部と、分断されている印象があります。越谷の中でも、また、分断されていたりするので(笑)。

川畑:もったいないですよね。

青野:そうですね。特に草加のこういう先進的な取り組み。やっぱり、あまり知られていないなと。越谷内でも、はかり屋という施設があることも知られていないし、みたいな。もったいないなと思っていて。

川畑:そうですね。

青野:あとは、ローカルの連携だったりとか、そういうところをどんどんやっていきたいなと、僕らも思っていて。こういう情報発信をするメディア。今は、メディアという立ち位置なんですけど。

僕らもコワーキングをつくったりとか、そういうリアルの場もつくっていきたいなと思っているんです。

そのあたりで、何か、ベットタウンの未来というか。寝に帰ってくる街の価値が変わったらいいなと。草加のリノベーションスクールでも、「ずっと面白い街」に、みたいなことが謳われて思うんですけど。川畑さんは、どうお考えなのかお聞きしたいです。ベットタウンの未来について。

川畑:いわゆる、地域活性とか、リノベーションというとどうしても、地産地消や特産品の飲食店などの「お店」という方に考えが向いてしまう方が多いと思うんです。

当たり前ですが、お店を続けるためには利益を出さなきゃいけない。さらに地域に根ざすためには、他のお店のお客さんを取らないといけない。でももし、お客さんのパイが変わらないとしたら、お客さんの取り合いになっちゃうじゃないですか。

僕が、お店を出来ないからそう思うのかもしれないですけど、草加で事業をやりつつ、草加、越谷、春日部などからも、ここに人が来ていただけるようにしていくためには、このエリア一帯で働く人を増やしたり、事業やビジネスをつくっていく視点が必要かなと

それはベットタウンだからこそ。ベッドタウンって、文字どおり、寝るための街だから、僕がそうであるように都内勤務の方も多いですよね。

2020年。オリンピックをきっかけに、地域にとってコワーキングの必要性はさらに高まる

川畑:ここからは勝手な想像ですけど、近い将来本当に働き方って変わると思っています。

来年、オリンピックがあるじゃないですか。サマータイムとかオフピークとか道路計画とかいろいろ言われていましたけど結局あまり変わっていないですよね。

例えば大手企業が、「オリンピックのときに、たぶん都内が大渋滞になっちゃうので、ちゃんと仕事を処理してくれればその期間は会社に来なくて良いよ」と。

出社しなくていいからそのかわりちゃんと仕事をしてね、とか言い出す大手企業が出てくると思うんですよ。大手企業が言い出したら、それが文化となって、在宅勤務が広がるんじゃないかなと。

やってみたら意外と問題ないね、みたいな。

青野:まさに、2011年の3,11。東北地方を襲った震災のときもですよね。そういったことが一時期ムーブメントになって。一旦落ち着いたけれども、それは確かに、復活しそうですね。

川畑:はい。朝の通勤ラッシュなどで電車も車も都内に集中していったら、そもそも選手が動けないですよね。

青野:そうですね、たしかに。

川畑:選手も、応援団も、大会関係者も、ぜんぜん動けない。首都高を止めるのかとか、いろいろ、問題になるじゃないですか。だったら、オリンピック期間中はもう会社に来なくて良いよ、と。という文化が、本当になるんじゃないか、と。

だとしたら、ここに仕事をしにくるサラリーマンがいても良いんじゃないかなと。それは、一つのテレワーク。リモートワークの未来形かもしれないですよね。

あとは、今、副業を許す会社も増えてきていますよね。ここだったら、僕、行政書士なので、そういう相談も。

青野:確定申告とかもそうですよね。

川畑:そうです。なので、ここに、士業を増やそうと思っています。

ビジネスの相談に乗れるとか、お金や不動産や事業の相談に乗れる行政書士がいて。

例えば、実は税理士さんの会員もいらっしゃって。さらに、司法書士もいて、という感じだと。「なんか、あそこに行くと、自分の仕事だけじゃなくて、相談もできるよ」となればいいなと。

青野:士業の方は、ちょっと敷居が高いイメージがあるというか、なかなか接点を持つ機会がないので、それができると嬉しいですよね。

川畑:そうなんですよ。だいたい士業の方って、6時以降、対応しない場合が多いんですよね。

なので、会員の士業の方に、相談できるようになれば、盛り上がる気はしていますね。「トリノスに行ったら、夜でも先生の話が聞けるよ」という。

青野:それは面白いですね。まさにいま、パラレルワークとか副業する人が増えてきていますよね。そういった文脈のなかで、税金や法律面での相談が気軽にできるのはいいなと。

それに僕も会社員なんですけど、普段は越谷から都内まで通勤していて。

でも、先ほど川畑さんもおっしゃっていた様に、今後、リモートワークが増えていく、というなかで。

「週の半分は、都内で、もう半分は越谷で」。みたいな働き方をするのが、理想的だなと思っているんです。

ただ地元にいるときに、作業するのは自宅か、カフェか、という。でもまさに、トリノスさんのような場所が近所にあったら良いなと思って。地方やベットタウンの各地域に、こういう場所が、どんどん増えていったらいいですよね。

各コワーキング間でも連携をするのもいいなと。今、多拠点生活という考え方もかなり浸透してきていて、月額4万円で住み放題のサービスなんかも出てきていますしね。

いろんな施設がどんどんネットワーク化していったり、人材がどんどん移動していったりみたいな、それぞれの地域間が交流できたら面白いかなと、思っていたりします。

先ほどおっしゃっていた、オリンピックのお話も、多様な働き方を推進していくうえで、一つの契機になるんじゃないかなと思いましたね、僕は。

川畑:確かにそうですね。トリノスもそういう多様な働き方を、後押しできるような存在になっていけたらなと思います。

青野:今日は貴重なお話を伺えてとても勉強になりました。ありがとうございました!

▽今回お話した場所

Coworking space TORINO’S

住所:埼玉県草加市高砂1-10-3-1

定休日:日曜・祝日(イベント利用を除く)

URL:http://torinos.space/

〈企画・インタビュアー・文:青野祐治 / 編集・撮影:藤田昂平

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