“常に変化し続けていたい”ーー野球少年だった僕が、ビジネスのフィールドで世界を目指すまで
プロ野球選手がメジャーリーグで己の力を試すように、新しいフィールドで自分の力を試してみたいーー。
そんな向上心あふれる男の物語。
誰もが知っている世界的大企業のGoogle。ECモールや金融など、日本でオンライン事業を手がける楽天。これらの企業で働いた経験を活かし、現在はホテルのデジタルマーケティング普及のために奮闘しているのが、越谷出身の辻畑駿さんだ。
常に目の前のことに全力投球し、自分で道を切り拓くことで着実にキャリアを積み重ねてきた彼は、越谷でどんな少年時代を過ごし、どのような考えをもって、仕事をしているのか。
今回は、ダービーソフト・ジャパン株式会社で働く辻畑さんにお話を伺った。
辻畑 駿(つじはた しゅん)
1988年生まれ、埼玉県越谷市出身。越谷西高→青山学院大学卒。大学卒業後、楽天に新卒入社。その後、Booking.com、Googleを渡り歩き、ダービーソフト・ジャパンに移籍。ホテル業界のデジタル化推進に向け、日々脳に汗を流している。
聞き手:青野 祐治(あおの ゆうじ)
ローカルストーリーメディア「KOSHIGAYAZINE」へんしゅうちょー。1987年越谷生まれ、越谷育ち。 越谷西高→青山学院大学卒。 広告会社やフリーランス、スタートアップでWeb編集、PRなどを経験。 大の巨人ファン。辻畑さんは高校・大学の誇らしき後輩である。
小学校から高校までは野球漬けの毎日。勉強なんて、まったくしてませんでした
――辻畑さんは、生まれも育ちも越谷市ですよね。越谷でどんな子ども時代を過ごされましたか?
辻畑駿さん(以下、辻畑さん)イチロー選手に憧れて小学生のときに野球をはじめ、高校生になるまでは野球一筋でした。勉強はまったくと言っていいほどしていませんでしたね(笑)
高校でもできる限り上手くなりたいと思って、甲子園出場経験もある越谷西校の野球部に入りました。しかし、当時ドラフトの目玉といわれていた投手と対戦してから、自分にプロは難しいと悟りました。
あ、ヒットを放つことはできたんですけどね(笑)そこで、ずっと続けてきた野球を辞めようと思ったんです。
――なるほど。野球を辞めてからは何をしたんですか?
辻畑さん 冷静に自分の進路を考えて、将来のためにある程度レベルの高い大学へ行こうと考えたんです。
それまで全然勉強してこなかったので、大学を目指すなら早く勉強を開始した方が良いと思い、高校2年生の冬に野球部を辞めて勉強を始めました。
偏差値30〜40台からそれなりにレベルの高い私立大学を目指すことになったんです。
――そこからの受験勉強は、相当大変だったのではないでしょうか?
辻畑さん かなり大変でしたね。
とにかく知識をインプットしなければいけなかったので、予備校に通って1日14時間くらい勉強していました。
多分、この頃が人生で1番集中した期間だったと思います。具体的にいうと、英単語を1日150個覚えていました。
勉強は大変でしたが、単語を覚えて英文が読めるようになると段々英語が好きになり、会話もできるようになりたいと思ったので、今にもつながっていますね。
――受験勉強が後々役に立ったんですね。受験結果はどうでしたか?僕は知ってるけど(笑)
辻畑さん 最終的に納得のいく結果になりましたね。青山学院大学の経済学部に合格したんです。
「インターネットに国境はない」。語学学習と国際交流に明け暮れた大学時代を経て、ITの世界へ
――大学の授業では、どんなことを勉強してたんですか?
辻畑さん 興味のない授業は、ほぼ出ていなかったんですよね(笑)大学時代の経験で今役立っているのは、どちらかというと授業よりアルバイトやサークルです。
――アルバイトは何をしていたんですか?
辻畑さん 某グローバルスポーツブランドで働いていましたね。
単純にブランドが好きだったというのもありますが、原宿という外国人が多い場所で英語を使って接客する機会を作りたかったんです。
実際外国人のお客さまが多かったので、いろいろな国の人と接点を持てたのがおもしろかったですね。
――アルバイトを語学学習につなげていたんですね。サークルでは、どんな活動をされていたんでしょうか?
辻畑さん 国際交流サークルに入って、留学生と交流していました。
受験でせっかく英語を勉強したので、話せるようになりたいなと思ったんです。
留学生と話したり、留学生が日本語で話す機会を作るために日本語学校へ行ったりしていました。
――アルバイトもサークルも、英語を使うものだったんですね。
辻畑さん 最初はとりあえず英語を勉強したんですが、その後韓国語にハマってずっと韓国語の勉強をしていましたね。
――なぜ韓国語を?
辻畑さん 個人的に言語が覚えやすいと感じたので、特技の1つとして身につけられたら良いなと思ったんです。
あとは、韓国の文化について知りたかった。日本の文化とは似ているようで似ていなくて、知っていくうちにどんどんハマっていきましたね。
韓国語検定準2級を取得して、韓国旅行もしましたし、老若男女問わず幅広いお友達ができたんです。
――勉強だけでは終わらず、実際に韓国へ行くという行動力が素晴らしいですね。
辻畑さん 多くの言語を話せるようになると、話せる相手が増えて見識が広がる。
するとビジネスのフィールドが広がってさまざまな経験ができますよね。だから社会人になって忙しくなる前に、自分の語学スキルを高めたいと思ったんです。
ゼミや卒論を辞めて、4年生の1年間で韓国をはじめ世界を旅しました。突き詰めようと思って、ひたすら韓国語や英語を勉強していましたね。
――ということは、海外へ行く前に就職活動は終えていたんですか?
辻畑さん そうですね。商社や楽天を受けて、結局楽天から内定をいただきました。
同期は銀行に就職する人が多かったけれど、僕は銀行よりもインターネットに興味があったんです。
なぜかというと、インターネットの世界には国境がないから。地理的な条件を超えて働けるというのは、とても魅力的だと思ったんです。
楽天で新人賞を獲得。Booking.com、Google…名だたる大手IT企業を渡り歩いた僕のキャリア論
――楽天に入って、最初の勤務地は?
辻畑さん 入社してから2年間は、北海道にいました。職種はECコンサルタントです。楽天市場に出店している店舗のコンサルティングが仕事でした。
僕はフードジャンルを担当していたので、カニやスイーツといった北海道名産の食べ物を扱うお店が多かったですね。
北海道支社には、10人くらいしか社員がいませんでした。大企業にいながらベンチャーのような雰囲気で仕事を楽しめたのは、良い経験でしたね。
――楽天はわりと自由に仕事できる感じだったの?
辻畑さん ガチガチのKPI(重要業績評価指標)マネジメントでした(笑)広告の売上と店舗の売上が大きなKPIでしたね。
ただし、その中で自由にやらせてもらえる環境だったので、早い段階から責任を持たせてもらえたのが良かったです。
僕は入社1年目の12月に高い売上を出して、新人賞を獲得しました。
良い店舗を担当させてもらえたというのはありますが、売上は平均の8倍くらい出しましたね。
――すごいですね。そんなに高い売上を出すのは、相当大変だったのでは?
辻畑さん 本当にきつかったですね(笑)
いきなり高額の広告は決まらないので、小さな売上を少しずつ積み重ねていくのですが、それが難しかったんです。
既存のお客さまに対して課題の提示や改善策の提案をして、アップセルにつなげていました。
北海道は広くて店舗を訪問する時間がもったいないので、ひたすら電話をかけましたね。それを2年間続けていました。
――北海道のあとは、どこへ?
辻畑さん 東京に戻って1年間、海外のお店に出店営業する部署にいました。
本当は北海道で2年働いた時点で、転職しようとしていたんです。マンネリになるのが嫌で、別のことをやってみたいと思ったんですよね。
常に変化し続けていないとダメなんですよね、僕は。でも東京に良い部署があると紹介されて、納得したので踏みとどまりました。その結果、人生の転機になるくらい良い経験をさせてもらいましたね。
東京では、アメリカのお店に「楽天市場へ出店しませんか」と電話をしていました。楽天は日本国内の出店数が多い一方で、世界的にはそこまで出店が進んでいない。
世界に目を向けてみると、可能性はまだまだたくさんある。その部署にいたことがきっかけで、英語が話せればもっと仕事の幅が広がると実感したんです。
――なるほど。改めて語学の重要性に気付いたんですね。その仕事が落ち着いてから、転職を決意されたんですか?
辻畑さん そうですね。英語も多少上手くなってきたと感じたので、外資系企業に行こうと思いました。
ただし、僕が当時やっていたECコンサルタントという職種は楽天特有のものだったので、外資に担当部署がなかったんです。
そのため、転職したとしても新しいことをやる部署に配属されてしまう。年収も楽天より下がってしまうんですよね。
そうではなく、自分がこれまでやってきたことを活かしながら、より良い条件で働ける会社を探していました。
――結果的にどこで働くことになったんですか?
辻畑さん Booking.com(ブッキングドットコム)に転職しました。宿泊施設のオンライン予約を取り扱っているグローバル企業です。Booking.comで働いたことが、日本のホテルについて深く知るきっかけになりましたね。
ただし、Booking.comはホテルに特化しているため、もう少しほかのジャンルも見てみたいと思い、数年後に再び転職しました。
――そしてGoogleへ入社されたんですね。
辻畑さん そうですね。Googleでは、たくさんの業界を見られました。
ただ、これまでの経験からホテルに強い興味があり、30代のうちに1つのジャンルに特化したいと考えていたので、マネージャーに相談してホテルチームを作ろうとしていたんです。
日本のホテルって自社でマーケティングをしているところが少ないので、そもそも広告予算がないんですよ。
ブッキングドットコムのような料金後払いの予約サイトを活用する方が、リスクは少ない。広告だとリスクがあるため、どうしても活用が進まないんです。
資本力があって設備数も多いチェーンのホテルでも、全然広告を使っていないんですよね。その現状をどうやって変えられるか考えていました。
――ではGoogleにいたときから、ホテルのマーケティングに特化した仕事をしていたんですか?
辻畑さん いいえ。日本のホテルが全然広告を使用していないので、顧客が見込めなかったことからGoogleでは仕事ができませんでした。
ホテルのデジタル化を提唱して業界を変えるためには、ホテルのデジタルマーケティングに特化した会社で働く必要があったんです。
そのため2年半勤めたのちにGoogleを退社し、再び転職しました。
日本のホテル業界に「デジタル革命」を。そして、僕の経験を地元へ還元したい
――いくつもの企業を経て、現在はダービーソフト・ジャパンで働いているんですね。ダービーソフト社は何をしている企業なんですか?
辻畑さん ホテルのデジタルマーケティングに特化したプラットフォームを販売している企業です。
ホテルの予約サイトはたくさんあるので、ホテルの担当者がサイトごとに予約を管理するのは大変ですよね。
そこで、複数のサイトの予約を一元管理できるシステムを提供することで、ホテルのデジタルマーケティングを推進していこうとしています。
また、集客領域にも携わっていますね。広告によってホテルの自社サイトを検索上位に持ってくることを推奨しています。
――自社サイトを検索上位に持ってくると、どんなメリットがあるんですか?
辻畑さん ホテルが自分たちで集客できるようになります。
日本ではもともと旅行予約サイトの勢いが強かったので、ホテルが独自に集客を行うという発想がないんですよね。
だからホテル名で検索すると、ブッキングドットコムや楽天トラベルといった旅行予約サイトがまず出てくる。
それらの下にやっと自社サイトが出てくるという検索結果が、日本では当たり前になっています。
旅行予約サイトは予約の総数を増やせる便利なものですが、手数料がかかってしまう。利益率を考えると、予約サイトを介さず直接予約してもらった方が良いですよね。
手数料を抑えられる分、ユーザーも安い宿泊料でホテルを利用できるようになります。
ホテルにもユーザーにも恩恵があるため、デジタルマーケティングが浸透してホテルが広告を活用するようになれば、ホテル業界がガラッと変わると思うんです。
――これまでブッキングドットコムやGoogleでホテルについて見てきたのが、今の仕事につながっているんですね。
辻畑さん はい。これまでのキャリアが全部つながっているので、個人的には良い選択をしてこれたのかなと思います。
――現在の具体的な仕事内容は?
辻畑さん 入社したばかりということもあり、今はデータの整理や数値管理の仕組みづくりをしています。
対象はアジア各国ですが、日本は特にホテルのデジタル化が進んでいないので、変えなければいけないと思っています。
――使命がはっきりしているんですね。それでは、今後のご自身の展望として、思い描いていることはありますか?
辻畑さん 将来的には海外に住みたいと思っています。生まれも育ちも越谷なので、もっと広い世界を知りたい。そのため、若いうちにどこでも働けるスキルを身につけておきたいです。
また、今後は、より自分の価値を高めていき、多くの人から必要とされる人になりたいですね。
――越谷に何か還元したいという思いはありますか?
辻畑さん そうですね。自分がこれまで経験してきたことを若い世代に伝えられたらと思います。
偉そうなことは言えませんが、若い方が自分の可能性を狭めないように、1つの生き方を提示できれば良いですね。
――辻畑さんのように、世界に目を向けて活躍している越谷出身の方がいるということを若い人たちにも知っていただきたいですね。今日はありがとうございました。
▽今回お話をうかがった場所
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