【越谷アルファーズ】実は“バスケ大国” !? 越谷にプロバスケットボールチームが爆誕。B2へ昇格した「越谷アルファーズ」が見つめる先

多くのビジネスが巣立つ場所に。ーー草加初のコワーキングスペース「TORINO’S(トリノス)」誕生のエピソード“ゼロ”【前編】

今年1月、越谷のお隣、草加市に初のコワーキングスペース「TORINO’S(トリノス)」がオープン。元々は鉄工所の倉庫だったが、リノベーションしてオシャレなワークスペースへと生まれ変わった。

この施設は、2017年9月に行われた『第2回リノベーションスクール@そうか』に参加したメンバーの中から、草加市在住の4人が集まり誕生したのだという。

そんなTORINO’S誕生の舞台裏やコワーキングスペースを通じて提供したい価値はなんなのか。そして、ベッドタウンの未来とはーー。

今回は、同施設を運営するネスティング株式会社の川畑喜史さんに、越谷に同じく宿場町を持つ草加のキーマンとして、そしてベッドタウンを盛り上げる同志として、KOSHIGAYAZINEのへんしゅうちょーの僕が、たっぷりとお話をさせていただいた。あまりにも盛り上がってしまったため、今回は前編後編の二本立てでお届けする。

 川畑喜史(かわばたのぶふみ)

ネスティング株式会社代表取締役。草加市生まれ、草加育ち。現在は、都内の企業で執行役員として、不動産コンサルと行政書士を務める傍ら、草加市初のコワーキングスペース「TORINO’S(トリノス)」を運営。

   聞き手 青野祐治(あおのゆうじ)

ローカルストーリーメディア「KOSHIGAYAZINE」へんしゅうちょー。1987年越谷生まれ、越谷育ち。越谷西高→青山学院大学卒。 広告会社やフリーランス、スタートアップでWeb編集、スピーチライティング、PRなどを経験。 大の巨人ファン。

「寝に帰るだけの街だった」。僕が、草加の地域活性化に興味を持った理由

ーー川畑さんは都内の会社に勤務しつつ、TORINO’Sを運営されていると伺いました。普段はどういったお仕事をされているんですか?

川畑:私は普段、大手町にある会社で、不動産コンサルと行政書士をしています。

不動産コンサルとは例えば、相続対策としての不動産の有効活用や空き家対策などですね。そういった仕事をメインとしているんです。

行政書士は、相続に関する遺言や会社の事業承継にも携わります。

たとえば先代社長がいて、「跡継ぎをどうしようか」といったご相談を内々に受けたりということもやったりしていますね。

ーー都内にお勤めされているということなのですが、地元の地域活性化やコワーキングスペースをつくろうと思われたきっかけはなんだったのでしょうか?

川畑:私は草加生まれの草加育ちで、小中高大とずっと市内に住んで通っていたんです。その後、社会人になって大手不動産仲介会社に就職したことをきっかけに、地元に住みながら都内に通勤しはじめました。

越谷にお住まいで、都内に通勤されている方なら想像しやすいかと思うんですけど、当時の僕にとって、まさに草加は「寝に帰るだけの街」だったんですよね。

平日なんかは朝から晩まで都内で働いて、電車に乗って帰って寝るだけ。まさに「ベッドタウン、草加」という感じでした。

ただ地元に帰ったときぐらいは、オンオフを切り替えたいというか。

地元での友達や知り合いも増やしていきたいなと思って、草加の御神輿の会に参加したんです。それが、25歳のときですね。

そこで、地域のお父様方や同年代の方とかと、繋がりができて。

御神輿を旧日光街道で担ぐことができるようになって、ようやく自分が草加市民の一員になれたんだなという感覚が生まれたんです。

でも、そのときはまだ、不動産仲介会社の営業マンをしていて。土日祝日に出勤することも多く、次第にその会に参加できなくなっていったんですよ。

その後、35歳で転職したことを機に10年の時を経て復活して。しかも当時のメンバーもまだ健在で、快く仲間に入れてくれたんですね。

ーーそこで、地域への貢献というか関わりが生まれたと。

川畑:はい。ただそれは、単純に楽しかったから参加していただけなんです。地域の友達をつくるっていう目的はあったんですけど。でも、そのとき感じたんです。

「旧日光街道が寂しくなっているな」って。

地元のお祭りなどで、神輿を担いで歩くのでどうしても気づいてしまうんですよね。以前やっていたお店が閉まったなとか。

リノベーションスクールとの出会いが、「TORINO’S」を産むきっかけに

ーー以前は賑わっていた通りに、活気が失われていくのを肌で感じられたと。

川畑:そうです。そういうことに気づくようになって。いわゆる、遊びじゃなくて、本気で地域活性に貢献できる方法はないかなと思うようになったんですよね。

そんなときにちょうど、「まちの学校」といういわゆる、リノベーションスクールの前段の講習会があって。

そこに、大島芳彦さんという方がモデレーターとしていらっしゃっていて。その話を聞きにいったのが、リノベーションやまちづくりに強く興味を持ったきっかけですね。

ーーどういうお話をされていたんですか?

川畑:大島さんは、ブルースタジオという、リノベによって地域を活性化させる不動産ベンチャーをはじめられた方で。かつ、ご本人が設計士さんという方なんですよ。そこでの発言が印象的で。

「建築士が言うのもなんだけど、これからの不動産は、建てることを考えていたら商売にならない」と。

要は、逆説的なことをおっしゃったんですよね。

「今あるものに付加価値をつけて、もう一回蘇らせる」というのが、今までにない、これからの建築士の仕事になるんじゃないか、ということを提唱されていて。

ーーそこで、うなずくことがたくさんあったと。

川畑:そうですね。すべて取り壊して、どこでも同じような再開発ビルをつくるのではなくて。

街や建物の面影を残しつつ、使い方を変えるとか、使う人を変えるとか、という形でちょっと手を加える。そうすると、街の色がまた蘇ると。

建物を壊して直すよりもショートタームで出来るし、安く出来るという。設計の仕事の面でも、これからそういった考え方が大事だ、みたいなことに対してなるほど、と思ったんです。壊して建てるだけが脳じゃないんだと。

ーー目から鱗だったわけですね。

川畑:そうですね。それで「リノベーションスクール@そうか」の2回目に参加することにしたんです。1回目を聴衆として聞きに行っていたんですけど、こういう動きがあるんだ、と。

ただ短期間で、集中的に話し合ってできた案を形にするので、「実現可能性はどうなんだろう」と、ちょっと懐疑的だったですよね(笑)。斜に構えながら、聞いていたんですけど4つのリノベ案が実際、すべて事業化したんです

ーーそれはすごい!

川畑:本当にやるんだと思って。それで、第2回のリノベーションスクール参加することにしたんです。

ーーはじめから、コワーキングスペースをつくろうという構想があったんですか?

川畑:構想とまではいかないんですけど、そういった空間が草加にもあったらいいな、とは思っていました。

わたし自身、仕事をしながら勉強するのが本当に大変だったので、家に帰る前に、寄り道して勉強する場所があったら良いなと思っている人が、他にもいるんじゃないかという仮説は持っていて。

私もそうですが実際に、税理士や行政書士の仲間にも書類やパソコンを持ち歩いて、カフェで仕事をしていたりするという人がたくさんいたんですね。そういった職業の人は個人情報を取り扱っているので、書類が広げづらいと。

だから、そういった書類を気兼ねなく広げられ、Wi-Fiが飛んでいて、何時間いても良いという場所が欲しいという声もあったので。

コワーキングスペースなら、そういったことを解決できるし、いつかそれをやってみようかなと思ってはいたんです。

倉庫と化した「元鉄工所」を、映画館にしよう

ーーぼんやりとイメージは持っていたんですね。リノベーションスクールで実際にブレストというか、皆さんで集まってアイデアを出すわけじゃないですか。4人でTORINO’Sを立ち上げられていますけど、そのチームで立ち上げられたということですか?

川畑:そうです。でもすごいです、紆余曲折が(笑)

リノベーションスクールって、3日間で行われるんですね。その初日の朝、会場に入るとすぐに、A班からD班までの4つの班に分けられるんですよ。

私はA班だったんですけど、全員、初対面なんですね。8人組で、いきなり班ごとに座って、みたいに言われて。なんだなんだ、という間に始まって。

いきなり、「Aチームにはこの物件で何をするかを決めてもらいます」と。物件もチームも、勝手に決まっている(笑)

ーーランダムに(笑)そこで割り振られた物件が、こちらの倉庫だったわけですね。

川畑:はい。それはびっくりしまして。「ここで何する?」と。

度肝を抜かれますよね。何もない鉄工所の倉庫でしたから。そのとき、小雨が降っていて。非常に暗くて嫌な予感がしたんですよ(笑)

そこに集まった8人は、行政書士、一級建築士、経営者や大学生などでした。

ただ、自分でレストランをやりたいとか、カフェを開きたいとかっていう、いわゆる職人系の人、手に職系の人で、自分でお店をやりたいという方は1人もいなくて…。

ーー他のユニットだと、カフェをやりたいという方もいらっしゃいましたもんね。

川畑:はい。それで何をしようかってなって、最初に上がった案が、映画館だったんですよ。

いまもここにスクリーンがあって、プロジェクターもあるんですけど。それで、公開プレゼンでは、映画館をつくりましょうという発表をしたんです。それで、思いの外その案は好評で、事業化する方向で話が進んでいきました。

ところが、です。

この鉄工所はトタン1枚なので、音漏れの問題などが浮上してきてしまって。また、住宅地ということもあり法律上、ここを映画館にするという用途変更を出来ないということが分かったんですよ。

これが全部、商業地域に建物が所在していれば問題ないんですけど。それの網に引っかかっちゃって「だめだね」と。

なので、2017年の9月のリノベーションスクールに参加して提案をしたけれども、映画館が出来ないということが分かったのが、その年の年末くらいで。「じゃあどうする?」と。

「どうする?」というのは、「どう使う?」という話と。「もう一回、集まれる?」という。

この場所に映画館はできない

ーーなるほど。予想外な展開になるんですね。

川畑:そうなんですよ。実際、3カ月も経つとそのときの熱量って変わっていますし。仕事が忙しくなって生活のリズムとかも変わる方も、なかにはいますからね。

だから、参加できないという方もいるかもしれないから、仕切り直してもう一回集まろう、と全員に声をかけて。結果、集まったのが、今の4人ということです。

ーーそれで再始動したのが、2018年の初頭ということなんですね。そこから、また、いろいろアイデアが出たんですか?

川畑:そうですね。4月くらいまでにいろいろと議論をして。結果、ここをコワーキングスペースにしていこうという話になったんです。

その4人のうち3人が、都内で仕事をしている人間ということもあり、コワーキングスペースの価値や有効性、使い勝手をすでに知っていて。それを草加ならでは、ローカライズして持ってこようということになったんです。

そして、昨年の7月に鉄工所のオーナーに対して、コワーキングスペースとして活用することを再提案したんですよ。それでオーナーさんも、それだったら、とご了解を頂いて。

ーーそもそも、コワーキングとしてやらせてくださいと言ったときに、割りとスムーズに了承は得られたんですか?コワーキングという比較的新しい概念は、なかなか理解を得るのが難しいというところもあったと思いました。

川畑:実際、草加にコワーキングスペースがなかったので、オーナーさんへのご説明は、かなり丁寧にしましたね。

この場所で仕事をしたり、人と人のビジネスの繋がりが生まれたりしますと。基本的に、集中して作業する場所なので、物音を立てませんとか。

あとは、オーナーさんのお子さんが、都内に通勤されている方で。コワーキングスペースというものをご存知だったということも追い風になりました。

ーーそれは大きいですね。

川畑:それに、プレゼンにはかなり力を入れました。ストーリーを重視したんです。

ーーほう。

川畑:まず、会場選びからこだわりました。

第2回のリノベーションスクールで事業化に成功した「アターブル」という洋食屋さんが旧道沿いにあるんです。

実はそこのオーナーが、僕の高校の同級生なんですよ。そういった縁もあって、2回目のプレゼンで失敗できないから、オーナーさんにここでやらせてくれ、とお願いをしたんです。

僕と同期で、先に事業化したレストランでお食事をしながらプレゼンをしたい、という。

その裏にはその会場がリノベーションスクールで事業化して、「ちゃんとお客さんも来ているということを見せたい」という想いがあったんです。

決して「遊びでやっているわけじゃない」というのを、ちゃんとお伝えするためにですね。

ーーいずれこうなりますよ、と。賑やかになりますよ、と。

川畑:はい。僕らも頑張りますよ、ということを伝えたいと。

この場所から、多くのビジネスに“巣立って”欲しい

ーープレゼンのストーリーは、どのあたりに一番注力されたんですか?未来を見せるとか、いろいろあるじゃないですか。

川畑:まず、「コワーキングスペースそのものが何なの?」というところからですね。写真を使い、いくつかのコワーキングスペースの写真をプレゼン資料に落とし込んで。こういう雰囲気の場所です、と。

飲食店でもないし、単なる公民館でもない。明るい雰囲気なんですよってお伝えしたいと思って。

ただ、それぞれが、「自分の仕事をしに来る集中する場所」ということを前提としてお伝えしたうえで「なんで、それが草加に必要なのか」という。

そのご説明のなかで、色々と資格を取るために勉強してきた僕の実体験として、勉強に集中できる場所がなかったというお話を熱心にしたんです。

あと、都内のほうではノマドワーカーみたいに、Wi-Fiを探しながらカフェで仕事をしている人がいる、と。

だから、草加でもそれが出来るかもしれない。僕ら、士業の中では、相当、需要は大きいということもお伝えしたんです。

さらに、そこに人が集まることで、そんな仕事をされているんですか?とか、コミュニケーションが生まれて、そこで、新たな事業が生まれたら素晴らしくないですか?というお話もしましたね。

その中で、やっぱり、オーナーさんが気にされていたことについて。まずは、音の問題。音は、コワーキングスペースですから大丈夫です、と。

あともう一つ、仕事場となるなら、ここで会社を作るという方も出てくるかもしれないけれど、それはちょっとご遠慮したい、という話だったんですよ。

会社登記をここにして、利用者に住所貸しみたいな感じで使われるのが困る、と。

要は、登記するとなると残ってしまうので、分かりました、と。仮に、新しいビジネスがここで生まれて、事業を開始するとしても、この住所を使っての法人登記はなしにしましょう、ということになったんですね。

そのかわり、この沿道沿いの空きオフィス、空き店舗を探して、ここから巣立つという意味で「トリノス」。それでどうですか?というお話をして。

ーープレゼンのときは、まだトリノスというネーミングではなかったんですね。オーナーさんとの対話のなかで、「トリノス」というネーミングに繋がったという。

川畑:はい。それで、納得されたと。ただ、フリーランスの方が自分の住所を名刺に書かずに済むという意味で、住所利用はOKにしています。

ーー起業を目指す人には、この場所を起点に高く羽ばたいていって欲しい。会社員の方やフリーランスの方には、トリノスの利用者間で繋がって欲しい、そういうのも大事にしてもらいたい、と。

川畑:そうですね。

実は、最初のコンセプトは、「YOUR SECOND DESK」だったんですよ。要は、職場でも、自宅でもない、もう一つの机を、ここで提供します、という形で打ち出していったんです。

それに加えて、「繋がれるコワーキング」ということで。交流会やセミナー、イベントなどで、利用者同士が繋がって、新しいビジネスを起こしていって欲しい、と。名前については、法人登記がダメとなったので、トリノスという名前を付けて。

トリノスのように、ここから巣立つというストーリーをご回答して、それでOKと。

ーーなるほど。かなりの紆余曲折があったんですね。

川畑:そうですね。これで「ようやくひと段落」、と思ったのも束の間。

ネクストアクションとして、「片付けをどうしようか」と。鉄工所は、工場としては閉めていらっしゃったので完全に倉庫と化していたんです。

普段、使わないものを山積みにしていた、という。真夏のめちゃくちゃ暑いなか、みんなで片付けを始めて、年末のオープンに向けてようやくプロジェクトが前進していったんです。

ーー後編に続きます

▽今回お話した場所

Coworking space TORINO’S

住所:埼玉県草加市高砂1-10-3-1

定休日:日曜・祝日(イベント利用を除く)

URL:http://torinos.space/

〈企画・インタビュアー・文:青野祐治 / 編集・撮影:藤田昂平

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