「越谷というベッドタウンの価値を再発明したい」カレーをつくるローカルメディア『KOSHIGAYAZINE』
こんにちわ!
都内で会社員をしながら、地元埼玉県越谷市のローカルストーリーメディア「KOSHIGAYAZINE」の編集長をしております、青野祐治ともうします。
越谷生まれ、越谷育ち、越谷在住な僕ですがいっときは、「越谷から出て行こう」と本気思っていました。そんな僕が、越谷のローカルメディアを始めた理由や越谷のいいところ、ローカルメディアがカレーをつくり始めた(今はお休み中)理由などをお伝えさせていただけたらと思います。
青野祐治(あおの ゆうじ)KOSHIGAYAZINE編集長
1987年越谷生まれ、越谷育ちの渋谷で働く編集者。複業で越谷市のローカルストーリーメディア「KOSHIGAYAZINE」の創刊編集長。 また、地元農業の魅力やストーリーを”一杯のカレーで味わえる”「K Curry」をプロデュース。地元の未来を考えるトークイベント「KOSHIGAYA MIRAI TALK」を主催。地方創生プラットフォーム「Fledge」への寄稿、ローカルテックサービス「Machitag」やフードシェアサービス「TABETE」と連携し地域をよりよくしていく。地域プレイヤーにフォーカスしたラジオ番組「もっとつながるFM」に出演歴あり。
越谷ぎらいだった僕が、地元でローカルメディアをはじめた理由
今では、越谷のローカルメディアを運営している僕ですが、これまでは越谷から出て行きたいと思っていて、KOSHIGAYAZINEをきっかけに地元愛が強まったという感じなんです。それは、越谷に魅力を感じていなかったから。
僕は、生まれも育ちも越谷です。両親は越谷出身ではなくて、関西方面の出身。結婚当初も越谷には住んでいなかったそうなんですけど、母の希望で僕が生まれる前に越谷に引っ越したのだそうです。いわゆるよそ者のようなものですね。
そんな僕は20代の後半で結婚しました。妻は先祖代々越谷に住み続けていて、僕とは中学校の同級生。夫婦揃って根っからの越谷人。
でも、越谷って田舎くさいし、特にアピールすることもない。子供の頃から越谷というか、埼玉自体にもですし、地元に対する愛着がまったくなくて。「ダサいたま」といわれているくらいですし(笑)、本当に何もないところだと思っていたんですよね。
今は、結婚して2人の子供もいるのであれですが、20代の独身の頃なんかは都内でひとり暮らしもしていましたし、いずれは北千住とか町屋、田園都市線エリアなどの都会でありながら落ち着いたところに引っ越すことも本気で考えていました。あと、移住もいいなと。例えば沖縄。
僕は昔から暖かいところ、特に沖縄が大好きでここ数年、僕の好きな巨人軍のキャンプに行っていたくらいなので。それくらい思い切った転居も考えていました。
移住ドラフトと呼ばれる移住希望者のためのイベントにも参加して、移住候補先が具体的に浮上もしたり。
でも、結局は引っ越さなかったんです。
きっかけのひとつは、母のガンの発覚でした。ちょうど妻が妊娠中、出産予定日の半年前くらいのことです。余命宣告をされるほどの段階での発覚だったので、ひとまず母の看病のためにも越谷にいようと決めたんですね。
結果、娘が誕生した翌年に母は亡くなりました。その後も移住するイメージを抱きつづけていたんですが、ふと「地元である越谷のことって、意外と知らないな」と思ったんですね。
埼玉にも地域によってはローカルメディアがあったんですが、越谷にはないなと。だったら自分でつくってみようと思ったのがKOSHIGAYAZINEを立ち上げることになったきっかけです。
もともと趣味でブログをやっていたり、仕事で他県のPRのお手伝いをしていたこともあったので、そういった経験を活かしつつ地元を見つめ直しながら、地域のストーリーを発信していけたらなと思ったんです。
越谷はベッドタウンではなく、 “暮らすのにちょうどいい”ミドル・シティ
越谷は同じ埼玉県にある「熊谷」とか、「川越」などとなぜか、よく間違われることが多いんですが(笑)、アジア最大級のイオンモール「イオンレイクタウン」がある街と言えば分かりやすいでしょう。
あまり存在感がある街とは言えないかもしれませんが、埼玉県内では4番目に人口が多い市であり、34万人が暮らす街。3番目の「川越市」の人口にじわじわと迫るほど、ここで暮らす人も増えてきています。
そんな越谷はいわゆる「ベッドタウン」。
父も四国の方の出身ですが、大学から上京し、都内の会社に就職。そして、結婚を機に埼玉県の越谷市に越してきて、毎日会社に1時間ほど掛けて通勤する生活をしていました。
まさに、「寝るための街」として、ここに住んでいたのです。
僕自身も越谷で暮らしながら、渋谷の会社に通勤しています。越谷からは、半蔵門線と接続された東武スカイツリーラインがあるので、55分ぐらいで1本で渋谷にいけますし。
行きも帰りも座れることが多いので、個人的には結構穴場なんではないかなぁと思っていたりしています。そんな、ど田舎じゃない…小田舎的な要素がベッドタウンの良さなんじゃないかなと。
そんな寝るための街、越谷には「きっと何もない」。
ずっとそう思ってきました。でも、その印象が少しづつ変わってきています。
僕がKOSHIGAYAZINEをスタートして1年ほど経ちましたが、何もないと思っていたこのベッドタウンには、実は色んな歴史や面白い人たちで溢れていることが分かってきたんです。
例えば、期間限定ではあるものの日本初となるカフェ型水族館が、イオンレイクタウンにできたり、イチゴ狩りができるスポットがたくさんあるなど、レジャースポットも満載。
今や全国区となった「千疋屋」の発祥は実は、越谷だったり。
こんなオシャレな洋菓子店さんがあったり。
海なし県に「uminoie」が登場したり。
最近では、オシャレなコーヒーショップも続々とオープン。
なかには、特大サイズの飲み物が名物化している古き良き喫茶店もありますね。
今、盛り上がりを見せているのが、一昨年誕生したばかりのプロバスケットボールチーム「越谷アルファーズ」。
ちなみに埼玉は日本で3番目にバスケ人口が多い県で、越谷では、ミニバスチームも多く、バスケットボールが盛んな街なのです。
むかしむかし、江戸時代。日光街道3番目の宿場町として越谷は栄えていたと言います。
特に徳川家康がお気に召されたまちだったようで、「越谷御殿」呼ばれる今でいう、別荘がつくられ、頻繁に越谷に訪れ鷹狩りを楽しまれていたという話もあります。
そんな旧日光街道に120年前からあるお屋敷「旧大野邸」。取り壊される寸前で、志ある方が待ったを掛け数々の奇跡の連続で、蘇ったのが古民家商業施設「はかり屋」です。
「衣・食・住」をテーマにした「本物志向」のお店が入り、若者向けの情報番組などでも取り上げられるほど、注目を浴びているスポットです。
はかり屋のなかでも人気なのが、キッシュとフレンチ惣菜のレストラン「minette」の「キッシュ」です。ここは開店時から行列ができることも多く、すぐに売り切れてしまうほど。一度食べたらやみつきになる美味しさ。
はかり屋には、「和」をテーマにしたギャラリーショップ「つると」もあり、越谷の伝統工芸品「だるま」を活用したアートプロジェクトに取り組むなど、クリエイティブになれる場所でもあります。
廃業寸前だった伝統あるお団子屋さんを、もともとお店のファンだったという3兄弟が思い一つでピンチを救ったというストーリーもありました。
越谷は、農業も盛ん。越谷に隣接している松伏町では、お米農家さんが、カフェを経営していたりもしています。
越谷で農家をしたり、野菜を使用した「やさいクリーム」などの商品開発を手がける若者も登場していたりするほど。いま、越谷は「農」分野でも密かに注目が集まってきています。
ちょっとここだけではお伝えできないほど、面白い取り組みやストーリーが潜んでいる越谷。都心へのアクセスもよく、程よくイケてるお店も多い街。そして、何より人が温かい。
僕はここ越谷を “暮らすのにちょうどいい”サイズ感の街「ミドル・シティ」と呼んで、ベッドタウンの印象や価値を変えていきたいと思っています。
情報発信だけのWebメディアではなく、“自ら仕掛けるメディア”でありたい
インタビュー記事を中心に、越谷の情報を発信してきたKOSHIGAYAZINE。Webメディアとしてオンライン上で活動していくのはもちろんなんですが、今後はもっとリアルな場も増やしていったり、自分たちからも話題づくりができるメディアになりたいと思っています。
例えば、取材させていただいたことをきっかけにご縁が生まれ、「何か一緒に組んでやりましょう!」と話が盛り上がったのが「つると」さん。
はかり屋のある旧日光街道に「もっと人を呼びたいな」と考え、つるとさんと企画したのが「KOSHIGAYA HAYAOKI PROJECT」です。
そのプロジェクトの一貫として行っているのが「越谷の未来」を考えるためのトークイベント「越谷ミライトーク」。第一線で活躍されている方をお招きし、毎回異なる視点から地域を活性化するヒントをいただいています。
他にも、越谷の日常をカメラにおさめる「KOSHIGAYA PHOTO WALK」。
有名な観光地が見当たらない埼玉県越谷市で、地元の人だけが知っている何気ない日常風景を、かっこよく綺麗に撮って県内・県外の人たちに向けて発信することで、新しい越谷市の一面を知ってもらうことを目的としています。
他にも、都内へ通勤する方も多いこの街で、「はたらくを考える」読書会も実施しています。
点在していた人が、こうしたイベントをすることで、どんどん結びついていく感覚が本当に楽しいですね。
そして、昨年スタートしたプロジェクトが「K Curry Project」です。
このプロジェクトでは、越谷産の野菜などを使用し“この街のストーリーを、一杯のカレーで味わう”をコンセプトとし、「地産地消をより身近に感じていただくだけでなく、越谷の魅力的なヒト・モノ・コトが交わる「フード・ラボ」を目指しています。(2020年8月現在、コロナの影響のため、いったん活動をおやすみしております。)
ベッドタウン、いやこのミドルシティを、「寝ても覚めても楽しい街」にしたい。
なんかおもろそうだな!と思ってもらえる取り組みをやっていけば、昔の僕のように越谷に興味のない若者もここに集まってきてくれると思うんです。
だから、こうした取り組みを通じて「わざわざ都内に出なくても、越谷でもおもしろいことがやれるぞ、あるぞ」と思ってもらえる街づくりに貢献したい。
これからは、「越谷のムードメーカー」として、「この街が面白いと思ってもらえるようなムードづくり」をいろいろ仕掛けていきたいと思っています。
ぜひ、越谷にも興味を持っていただけると嬉しいです!
埼玉県越谷市のローカルストーリーメディア「KOSHIGAYAZINE」
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