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人間模様を描くようなお店づくりをーー世界のビールが楽しめるお店「Pangaea(パンゲア)」店主の胸に秘められた“優しい情熱”

人間模様を描くようなお店づくりをーー世界のビールが楽しめるお店「Pangaea(パンゲア)」店主の胸に秘められた“優しい情熱”

自分はどんな仕事がしたくて、なんでその仕事しているのか。忙しい毎日に身を置いていると、そんなこと考える時間なんてないかもしれない。

南越谷駅から徒歩2分の場所にある多国籍ダイニング「パンゲア」

ここでは世界各国の料理やお酒を提供しており、店内には各国の雑貨や民芸品が飾られ、非日常的でありながら心地よい雰囲気を演出している。

「Pangaea(パンゲア)」という言葉は、かつて存在した超大陸を意味するという。

店主はフリーランスで映画の助監督という仕事をしながら地球2周の旅をする中で、自分が今まで大切にしてきたことに気付き、現在飲食店を経営している。

今回はそんな珍しい経歴の持ち主である多国籍ダイニング「パンゲア」の早坂泰彦さんに、同じく旅行好きのぼくがお話を伺ってきた。

今回ご紹介する「KOSHIGAYA ZINE」

 早坂泰彦(はやさかやすひこ)

越谷市出身。多国籍ダイニング「Pangea」のオーナー。元フリーランスの映画助監督で地球2周するほどの旅好きでもある。

 聞き手 藤田昂平(ふじたこうへい)

越谷生まれ、越谷育ちのフリーライター。日本大学理工学部を卒業後、大手建設コンサルタント会社で街づくりの仕事に従事。4年間働いた後、30カ国を巡る世界一周の旅をした際に日本の美しさや地元の良さを再認識。

 

フリーランスの映画助監督として、11年。パンゲア店主の知られざる過去

ーー今日はよろしくお願いします。まずパンゲアはどんなお店なんですか?

早坂さん:地球2周の旅をしていたこともあって、世界各国の料理やビールを提供しているんですけど、まず世界を身近に感じてほしいという思いがあります。

身近に感じると親近感湧くじゃないですか。旅行で行ったとか、友達が住んでるとか。例えば、今だったら韓国と揉めたりしてても、韓国料理が好きだったり韓流ドラマが好きだったら敵対意識って持たないじゃないですか。

そんな風に身近に感じて知ることは大切だと思ってるんです。

自分が旅行をしていた時はあまりに無知だったので、海外に行ってから知ることがたくさんあったんですね。

歴史とか文化とか。知ることは楽しいことだし、知ることは良いことだと思うので。

ーー確かにそうですよね!学生の頃から海外に行こうと思っていたんですか?

早坂さん:あんまりなかったですね(笑)自分は高校生の時から映画監督になりたいと思っていたので。

大学時代は工学部土木工学科で、同級生は建設会社に入って道路とか橋とか作ってますが、それも全然興味がなかったんです。

−−大学卒業後はどこかに就職されたんですか?

早坂さん:大学卒業後は映画会社に入ろうと思っていたんです。

図書館に行って電話帳の映画製作会社のページをコピーして、アパートから一件一件電話したのがぼくの就活なんです。

就職活動として大手の映画製作会社とか受けたんですけど、学歴が良い人達しか入れないので当然のように落ちました。

それでいくつか映像製作会社の面接を受けて、その中の1つに就職したんですけど、思うような内容の仕事ができなくて、1ヶ月で「ここじゃダメだ」、「辞めたいな」って思ったんです。

−−そうだったんですね。

早坂さん:そんな時、就活中に出会った人を思い出したんです。

その人は、駅の公衆電話で「助監督の佐藤ですが…」って電話してたんです。その人が何かの台本持ってるのが見えたんですけど、そこに書いてあったのが、なんと、今度受けようと思ってる会社の名前(笑)

それで、電話終わるのを待って声をかけたんです。

そしたら「僕はフリーランスで働いてて、ここの社員じゃないんだよね」って言われて、そこで初めて「フリーランス」という働き方を知ったんです。

「就職=会社員になること」だと思っていたので衝撃でしたね。

辞めたくなった時に、佐藤さんに相談すると、プロデューサーを紹介してくれて、日活撮影所でフリーランスの助監督として働くことになったんです。それが22歳のときでした。

−−助監督って具体的にどんなお仕事なんですか?

早坂さん:演出する監督の補佐なんですけど、例えば、主役の芝居の演出は監督の仕事で、周り役者やエキストラの演出、衣裳、小道具の演出、撮影スケジュールなどを決めるのが助監督の仕事です。

毎日3時間ぐらいしか寝れないし、家に帰るのは1週間に1回とかでしたけど、1作品ごとの契約なので、がっつり仕事したら休む、がっつり仕事したら休むっていう生活でした。

−−海外にはその頃から行かれていたんですか?

早坂さん:そうですね。

連続ドラマや映画の助監督をしている時は休みなんて全然ないけど「これが終わったら海外に行けるぞ」と思いながら仕事をしていました。

例えば1〜3月で撮影して、4月は旅行、5〜9月に連ドラやって、10月旅行みたいな感じです。

世界を旅して気付いた。 僕は「人間模様」を描くような飲食店をつくりたい

−−その期間を使って地球を2周したんですか?

早坂さん:27〜28歳ぐらいの時に一番旅行をしていたんですけど、地球1周は3ヶ月間の船旅で行ったんです。

ピースボートっていうんですけど、その時【21世紀を日付変更線で迎えませんか?】みたいなキャッチコピーに惹かれて、どこの国に行くのかも知らずに応募したんです。

ピースボートって船がすごく大きくて運動会とかイベントが結構あるんですけど、そのイベントの撮影をしたり映像を流したりしていたので、お客さんとして乗っているのに徹夜で編集とかしてました(笑)。

そしたらピースボートの人に「ピースボートのスタッフになってほしい」って言われたので、1年後にもう1周だけ参加したんです。2周目はカメラマンとして参加しました。

これ以外にも旅行には行っているんですけど、地球2周って謳っているのはそのことを言っているんです。

−−今まで何カ国ぐらい行かれたんですか?

早坂さん:だいたい30カ国ぐらいですね。

−−すごいですね。お店はいつ頃からやりたいという気持ちになったんですか?

早坂さん:船旅をしている時って大陸の移動だと次の国に行くまでに1週間とかかかるので、考える時間がたくさんあるんです。その中でぼーっと今後のことを考えたりする時があったんです。

そういえば、なんで自分は映画を作ろうとしたり、旅行が好きなんだろうと思った時に、やっぱり「人」だなと思ったんです。

映画でもサスペンスとかアクション映画には興味がなくて、映画を観た後に「久しぶりに親に連絡してみようかな」とか「駅に困ってるおばあちゃんがいるから助けてあげよう」とか、優しい行動に繋がるような人間模様が描きたいって思ってたんですよね。

それに、旅行中に歴史ある建物とか見ていても「2000年の間ここで毎日誰かがお祈りしてるのか」とか、綺麗な夜景を見てても「この家の明かりそれぞれに人の生活があるのか」とか、やっぱり人の思いとか歴史に目がいっちゃうんです。

そう思った時に直接人と繋がって人間模様が作っていける飲食店はいいかもなって思い始めたんです。

−−それがきっかけだったんですね!

早坂さん:最初は50歳ぐらいで隠居した時にカフェとかできればいいと思ってたんです。

でも、33歳の時に助監督の仕事をしながら飲食店のことばっかり考えるようになって、「お店がやりたい」と思ってる自分に気付いたんです。

そこからどんどんお店がやりたくなって、助監督を辞めてお店をやろうと決めたんですよね。

だから、映像の仕事を辞めたのも嫌だったから辞めたんじゃないんです。今でも好きですし、いまだにロケしてる夢もたまに見ます(笑)。

「ホールは舞台だ!」元助監督ならではの演出とお店づくり

−−お店作りで苦労したことはありますか?

早坂さん:未だに苦労してますけど(笑)幸いなことにうちのシェフは越谷が地元の同級生なんですよ。

自分でお店をやろうと思ったときに当時から料理人だった同級生に「コックさんってどこで雇ったらいいの?」って電話したら、彼が「今働いてるお店を辞めようかと思っている」って言ったので、二人でお店をやることになりました。

越谷だったら南越谷駅周辺が一番だなって話し合って物件を探し始めて、ここに決めたんです。

オープン初日に初めてお客さんが来てくれたときは嬉しかったですねー(笑)。

一番最初のお客さんは知り合いとかじゃなく来てくれたんです。

だから今でも、こんなお店に来てくれただけですごく嬉しいんで、「いらっしゃいませ!」って笑顔になるし、「この店に来てくれて本当にありがとう!」「またお願いします!」って心から思いますしね。

−−嬉しさが伝わってきますね(笑)

早坂さん:はい。それと、ぼくはお店って演出が大切だと思っているんです。

スタッフが何を着ているか、テーブルには何が置いてあるか、どんな照明で、どんな音楽をかけているか、どんな装飾品を置いているか、全部お客さんに喜んでもらうための演出だと思うんですよね。

それに、スタッフにはいつも「ホールは舞台だ!」って言ってるんです。

表現の場所ですし。 

つながりを大切にする。店名「パンゲア」に込められた想い

−−それは元助監督ならではの発想から生まれたお店づくりですね!

早坂さん:「なんで助監督からいきなりお店やるの?」「全然違う仕事じゃん!」ってよく言われるんですけど、あまりそうは思ってないところはありますね。

−−店内のインテリアや装飾品はご自身で集められたんですか?

早坂さん:もともと、自分でいろんな国に行って買ってきたものもありますし、プレゼントやお土産で頂いたりしたものもあります。

これなんかは友人に書いてもらったんですけど、「パンゲア」の意味ってなんだと思います?

−−なんか昔、歴史で習ったような…。わからないので、教えてください!

早坂さん:今から大体2億5000年前かな。今のアフリカとかユーラシアとかオーストラリアって全部くっついてたんですよ。

その1つの大陸を「パンゲア大陸」っていうんです。

いろんな国の文化とかあるけど、みんなもともと一つだったっていう、「繋がり」を大事にしたいという意味が込められてます。

−−すごく素敵な意味ですね。

早坂さん:むかし、常連さんに転職の相談されたことがあって、その人は海外で仕事がしたくて転職を考えてたみたいなんですけど、

「自分がワクワクする方に行けばいいんじゃないですか?」って言ったら、転職を決めたようで、それからしょっちゅう「おれは早坂さんの言葉で転職決めたんだよ!」っていろんな人に言うんですよ。

感謝してくれてるみたいなんですけど(笑)そしたら去年、海外転勤が決まって今、海外に住んでるんです。

海外に行くちょっと前に来てくれて、「夢が叶ったんです!」って報告に来てくれて、一緒に写真撮って、今でもフェイスブックで繋がってるんですけど、そういうのは嬉しいですね。

−−お客さんとの繋がりも生まれているんですね。今後はどんなお店にしていきたいですか?

早坂さん:グローバルと思いながらもやっぱり地元も大切にしたいので、その両方だと思ってます。もともと自分がお店をやりたいと思ったのは、一人で行けて落ち着ける場所が欲しかったからなんです。

仕事帰りに寄ってもらって美味しくご飯が食べれれば元気になるじゃないですか。

美味しい料理を作るのは料理人の仕事だけど、自分は接客する立場としてそれを更に美味しく感じてもらいたいです。

どんな高級レストランに行っても上司に怒られながら食べたら美味しくないけど、コンビニ弁当でも友達と笑いながら食べたら美味しいでしょ?

それが僕たちの仕事だと思ってます。

−−本日は貴重なお話をありがとうござました!

パンゲアは3月3日に12年続けてきたランチ営業をストップする。

何年もランチに来てくれた方々には申し訳ないという気持ちを滲ませながらも、これからはディナーに集中して、新たな試みや、新たな知識を吸収して、早くお客さんに喜んでもらいたくてワクワクしている様子がすごく印象的だった。

ストレス社会からのエスケープ。

あなたもお仕事帰りに足を運んでみてはいかがだろうか。

多国籍ダイニングーPangaea

住所:埼玉県越谷市南越谷1-27-7 ノーブルクロスⅡ 2F

営業時間:ランチ 11:30~14:30(ラストオーダー14:00)※ランチは3月3日で終了予定。
ディナー 17:30~24:00(ラストオーダー23:30)

定休日:なし(年末年始を除く)

URL:http://www.dining-pangaea.com/html/access.html

〈インタビュアー・文:藤田昂平/ 企画・撮影:青野祐治

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