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「私たちも子供も “楽しい”  イベントを 」。創部51年、こどもと地域をつなぐ「文教大学 Wonderkids」のワークライフバランス

「私たちも子供も “楽しい”  イベントを 」。創部51年、こどもと地域をつなぐ「文教大学 Wonderkids」のワークライフバランス

ワークライフバランス。仕事と生活をうまく両立させる生き方を指し、仕事中心になりがちな “働く人々” への提言として使われることが多い言葉だ。

しかしバランスのとり方を試行錯誤しているのは社会人だけではない。

文教大学の「子どもといっしょWonderkids(以下、ワンキ)」は今年が51年目という歴史ある部活動。各地で公演を行ったり子供たちと遊んだりしている。

大学での勉強に課題、そして生活のためのアルバイトをしながら活動に取り組む部員たち。彼女らもまた、部活動と生活のワークライフバランスについて葛藤していた。

ワンキの部長である “わこ” さんは、「遊びを削ってでもやる価値がある」と思いながらも「もっとみんながやりたいことを我慢しないで活動できるようにしたい」と言う。

忙しい大学生活の中でワンキとして活動を続ける原動力とは何なのか。そして部員の考えるワークライフバランスとは。

ワンキの部長 “わこ” さん、子ども会部会 “ラーニャ” さん、渉外担当 “ぽな” さんの3人にお話をうかがった。

●登場人物

本間衣純さん:部長 3年 サークルネーム「わこ」

遠藤五葉さん:会計 2年 サークルネーム「ラーニャ」

田村菜月さん:渉外 3年 サークルネーム「ぽな」

なんでも自分たちでやるのがワンキ流

—―まずはワンキについて教えてください。

本間衣純さん(以下、わこ):ワンキは今年51年目の伝統ある部活で、「おはなし部会」「人形劇部会」「子ども会部会」の3つの部会に分かれて活動しています。

本部や学祭委員などもあり、部活の中でも組織的に運営をしているほうだと思います。

おはなし部会は公演で紙芝居や絵本の読み聞かせをします。うちみたいにレトロで本格的な紙芝居ケースを使っているところは珍しいと思います。

人形劇部会は公演で人形劇をします。脚本も人形もすべて自分たちで作っているんです。

遠藤五葉さん(以下、ラーニャ):人形劇部会の「なんでも自分たちでやる」ってスタンスはすごいよね。

田村菜月さん(以下、ぽな):しかも公演ごとに新規で脚本を作って、あまり使いまわすことはないんです。

ラーニャ:私が所属する子ども会部会は公園で子供たちと遊んだり、遠足やキャンプなどのイベントを企画したりします。子ども会部会はさらに2つに分かれていて、主に文教大学の近く、北越谷で活動する「ひだまりhappy」と武里団地で活動する「大空kids」の2つがあります。

—―活動日は多いんですか?

わこ:おはなし部会と人形劇部会は週2日、子ども会部会は週3日です。

ラーニャ:子ども会部会は「土活(どかつ)」という活動があるんです。土曜日に子ども会会員の子供たちと公園や公民館で遊んでいます。だからその分、ほかの部会より1日多くなっています。

—―毎週土曜日に活動するのは、なかなか大変なんじゃないですか?

ラーニャ:大変ですけど、私は子ども会部会で活動したくてワンキに入りましたから。

サークルネームで入るスイッチ。子供と接する醍醐味とは

(左からぽなさん、わこさん)

—―ワンキに入ったのはやっぱり子供が好きだったからですか?

ラーニャ:そうですね。7つ下の妹がいて、お世話をしていたのも大きいです。

子供が好きだから教師になろうと思って文教に入って、ワンキに出会いました。子ども会部会は遠足などのイベントもあって、主体的に活動できるんですよ。企画するのも好きだし私にぴったりだなって。

ぽな:私も子供が好きで入りました。大学ではボランティアをやりたいって思ってたんです。入学してワンキの人形劇を見たとき、先輩たちの仲が良くて活動も主体的にできそうで入りたいなって思いました。

わこ:アットホームな感じは私も入部の決め手でした。大学では子供に関する部活をやりたいなと思ってて、ワンキを見たらいい人ばかりで即入部を決めちゃいました。しかも私は読み聞かせが好きで、おはなし部会っていうドンピシャな部会まであったから即決定です。

—―みなさん、本当に子供が好きなんですね。

ラーニャ:「おちびがいっぱい 美味しそう!」っていうのがラーニャのモットーなんですけど。

わこ:なにそれ、怖っ(笑)

ラーニャ:子供ってやっぱりすごくかわいいんですよね。それに大人とは違う価値観や発想を持ってるのもおもしろくて。

前にクリスマス会で、子供たちにサンタさんに向けてメッセージカードを書いてもらったんです。そしたらカードにパンのシールをいっぱい貼りつけてた子がいて。よくよく聞いてみたら「サンタさんにお礼のごはんをあげたいんだ」って。絶対に大人では出ない発想じゃないですか?

わこ:うんうん、子供と話すのって本当に楽しい。ずーっと話しちゃう。公演の前におしゃべりしてると時間を忘れちゃって……。

ラーニャ:わこさんが話しすぎて、なかなか公演が始まらない(笑)

わこ:それは申し訳ないと思ってる(笑)

ぽな:でも子供とのやりとりは本当に楽しいですよね。人形劇の公演も夢中で見てくれて反応も返してくれる。それと、子供って朝できなかったことが帰りには出来るようになったりするんです。成長を一緒に感じられるのもすてきだなって思います。

—―みなさん、出身は越谷市外と聞いています。文教大学周辺、もしくは越谷の子供たちについて、どんなことを感じますか?

わこ:フレンドリーだなって思います。素直な子が多くて、いい意味で子供っぽさがあるっていうのかな。心を開いてくれるし反応も大きい。

ラーニャ:私が所属する大空kidsは武里団地エリアなんですけど、もっと都会っ子っぽい感じなんです。学校も新しくてイマドキ感がある分、素直になれない子も多いような。ツンデレもかわいいんですけどね。

わこ:この辺はほどよい田舎っ子って感じ。ほのぼのしてあったかい。北越谷っていうエリアの雰囲気なのかもしれません。散歩中のおじいちゃんおばあちゃんからもよく話しかけられますし。

ラーニャ:越谷って意外とゴミゴミしてないよね。けど、遊ぶとこは不便かなぁ。カラオケ、ボーリング、レイクタウンの3択!みたいな(笑)

わこ:田舎と都会の真ん中なんだよね、きっと。

(左からラーニャさん、ぽなさん)

ぽな:私の地元は千葉なんですけど、子供が少ないんですよね。だから子供はおじいちゃんおばあちゃんと遊ぶことが多くて大人慣れはしているんですけど、大学生とかのお兄さんお姉さんとかかわる機会は少ないみたいです。

ナナメの関係が少ないっていうのかな。親でも教師でも同年代の友達でもない第3の存在。子どもにとっては大事だけど、地域によってはなかなか難しいと思う。

ラーニャ:この辺は、文教大学があるのが大きいよね。幼稚園や小学校も何かしらかかわっている感じ。

ぽな:うん。縦のつながりが多い感じはする。

—―おはなしを聞いていると、部内のアットホームな雰囲気が伝わってきます。

わこ:それがワンキのウリですから!

子供との距離も部員同士の距離も近いのはサークルネームのおかげもあります。私の “わこ” もサークルネームなんですけど、子供も呼び捨てOKにしているんです。

ラーニャ:サークルネームで呼ばれるのって嬉しいよね。

わこ:うん。子供の前だと「わこスイッチ」入るもん。

ラーニャ:分かる。 “遠藤” でも “五葉” でもない “ラーニャ” になれる。私の中では、大人でも子供でもない存在なんです。

事務作業に保護者対応も。少なくなるプライベートも子供と話すとチャラになる

—―活動は楽しくやりがいがあるものだと伝わってきました。でも、それだけまっすぐに取り組んでいるとプライベートな時間の確保は難しいのでは?

ラーニャ:ブラックだと思います(笑)

わこ:サークルではなく部活ということもあって、やっぱり真面目なんですよね。大学感はないです。

ラーニャ:遊びに行くのを削っている部分はあります。楽しくて自分のためにもなるけれど、アルバイトにあまり時間を割けないので経済的にはきついですね。

—―活動に割く時間が多いと、入部にしり込みする人もいるのでは?

わこ:それはあると思います。

あと最近は子供関係のサークルがいくつかできたんです。新入生にとっては選択肢が増え、結果的にワンキの人数が減って、余計に忙しさを感じるところもあります。

ぽな:人数が少ないと、せっかくの依頼を断らざるを得ないことも増えてきます。渉外担当としてはツラいですね。

(人形もイチから手作りしている)

—―子供だけでなく大人とのやりとりもあるわけですもんね。

ぽな:そうですね。私は渉外担当なので、大学や学外の方とのやりとりも多いです。

ラーニャ:子ども会部会は会員さんにお金をいただいて、子ども会の活動をしています。

でも活動場所が公共の公園だと、非会員の子供が参加したがることもあるんですよね。会員さんからお金をいただいている以上、非会員の参加は断らないといけないんですけど、そんなの子供には関係ないじゃないですか。同じ地域の子供ですし。

でももしケガや体調不良があったときに、責任取れるかって言われたら難しいんですよね。保護者さんの連絡先も分からないし。

ケースごとに話し合い、保護者さんともすり合わせて活動をしています。

—―仕事ぶりを聞いていると、すでに先生みたいですね。

ラーニャ:ですよね。「子どもといっしょ」を掲げる部活ですが、やっぱり大人とのやりとりも必要なんです。

わこ:事務作業も多いから、本当に先生気分です。部誌もかなり細かく作りこんでいます。

ラーニャ:ちゃんと作りすぎていて、最初見たとき、軽く引きましたもん。

わこ:総会もあるんですけど、部員に考えを伝えるって大変なんですよね。効率よく分かりやすく飽きさせずに伝えるために、話し方は工夫しています。もう本当に先生ですよね。

—―そういった仕事に加えて普段の公演やイベント、学園祭もあるんですよね。

ラーニャ:毎日が文化祭気分です(笑)

—―遊びやアルバイトなどを優先したいとは思わないんですか?

わこ:うーん、大変なんですけどね。それでも子供と接するとチャラになっちゃうんですよね。私にとってワンキの活動は、価値がすごく高いんです。

今は遊びやアルバイトの時間を削ってでもやったほうが良いって思ってます。自己投資、みたいな感じでもあります。

ラーニャ:卒業した先輩に、「大学を卒業して先生になったらしなくちゃいけないことしかできなくなるけど、ワンキはしたいことができる」って言われたことがあるんです。それを聞いて、「今しかない機会を逃すのか? もったいない!」って思いました。

目指すのは「私たちも子供たちも楽しいイベント」

—―強い思いで活動されているのが伝わってきました。

わこ:でも、やっぱり無理して頑張るのはダメなんじゃないかなって、個人としても部長としても思います。やりたいことをすべて我慢して部活に捧げるってのはどうなのかなって。

—―いわゆるワークライフバランスですね。

わこ:やりたいことって言っても、アルバイトに捧げたいから活動を休みますってのは違うんですよね。好きなときに好きなことだけやるってのはダメです。

たとえば私は海外に行ったり、学童の補助支援員など別のボランティアにも参加したりしてみたいなって思ってるんです。やるなら日程の都合もあって活動を休むことにもなりますけど、個人で練習をして公演は全力で取り組みます。

ほかの部員に負担はかかると思いますけど、そのぶん別の部員が休むときは笑顔で送り出してカバーできればって思うんです。

ぽな:部内で融通を効かせて活動できると良いですよね。

ラーニャ:私は子ども会部会でイベントの担当をしてるんですけど、参加者を募って集金して父母会で説明して……とやることが多いんです。それでも子供たちには自分が楽しかったものは体験してほしいって思うので、秋の遠足も課題や活動の合間を縫って企画しています。

予定も詰まってるしいつまでたっても忙しいし、負担も大きいです。だからそういう意味でも「私たちも楽しくて子供たちも楽しいイベント」を考えていきたいです。

—―モチベーションって大事ですもんね。

わこ:今年51年目ですし、このまま100年まで続いたらいいなって思っています。そのためにはバランスも大事だなって。

ワンキの魅力は部員同士の仲の良さです。今後とも地域の方に愛される部活でいたいし、そうあってほしいって思います。

ラーニャ:文教がある限りはずっと続いてほしいです!

わこ:地域のみなさん、末永くよろしくお願いします!

 

▽今回お話しを伺った場所

文教大学

住所:埼玉県越谷市南荻島3337

URL:https://www.bunkyo.ac.jp/

〈インタビュアー・文・ 撮影:高梨リンカ

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