越谷での日常にカフェがあってほしい。喫茶ソスイの店主が語る「意外なビジョン」
越谷レイクタウンの駅から車で10分くらいのところに喫茶ソスイはある。古民家をリノベーションしていて、カフェ本などからの取材も受ける注目のお店だ。
今回は、喫茶ソスイの店主鈴木希弥子さんからお話を伺った。鈴木さんは越谷出身、越谷在住。
もともと出版業界にいたけれど、カフェ業界への転身という異業種へのチャレンジ。とはいえ、転身理由は実にシンプル。「え〜…」と言いながら、ひねり出して話してくれた、これからのビジョンにも注目。
出版業界からの転身
ーー鈴木さんは越谷でカフェをやられていますが、ご出身はどちらですか?
鈴木希弥子さん(以下、鈴木):越谷出身です。大学卒業後は出版社へ入社しました。途中で諸事情があり7年ほど関西へ行きましたが、関東に戻ってきてまた出版関係の会社に入りました。
ーー出版業界の方だったんですね…!どうしてカフェを開こうと考えたのでしょうか。
鈴木:出版の仕事は好きでした。だけど、『このまま60歳までこの仕事を続けるのは、飽きるかもしれない』と思って。
関西にいたとき、知人のブックカフェで働かせてもらっていたんです。
その経験もありましたし、小さい頃に調理クラブに入っていたりと、料理自体は好きでしたね。
それで、今自分が何かやるってなったら、料理くらいしかできることがないなって思って。様々な人が出入りするお店という空間も好きでそれでカフェを始めました。
ーーそれでカフェを開けるなんて…。喫茶ソスイの名物はカレーですが、カレーが得意料理だったのですか?
鈴木:特にそういうことはないんですよね(笑)ソスイのカレーは、関西で働かせてもらっていたブックカフェのカレーのレシピをベースにしています。
最初は『そのお店のカレーってことにするので、メニューに出してもいいですか?』って許可を取ったんです。
でも、そのお店の方が『オリジナルのアレンジも加わるだろうし、書かなくていいよ』と言ってくれて。実際レシピは変わりましたね。
居心地が良いお店にしたいから、大切にしていること
ーー喫茶ソスイをオープンしたときに、苦労したことはありますか?
鈴木:お金がなかったことですかね。とりあえず安くて借りれるところを探していたら、知人の不動産関係の仕事をしている女性が『散歩の途中に良い物件があったよ!』って紹介してくれたんです。(笑)
大家さんも見つけてきてくれて、交渉もしてくれました。それ以外は今となってはあまり思い出せない…ですね。
ーー人とのつながり、ですね。オープンまではどれくらいかかったのでしょうか?
鈴木:ここはもともと、普通の平屋でした。それを空間を共有している古道具店の店主とリノベーションしたのですが、その期間も含めて約半年。2014年に、構想からオープンまできました。
ーー半年…?超人的ですね…。
鈴木:ぼんやりとですが、ずっと『カフェをやってみようかな』って思っていたからですかね。実際に、『やってみない?』と話もありました。
本当にカフェをやろうと考えましたが、最初は出版の仕事を辞めたくなかったんですよね。17時で帰れる会社だったので、週末だけ、夜だけの営業にしようかなと。
だけど、考えるうちに『中途半端だったら辞めちまえ』って思うようになって(笑)
ーー『中途半端だったらやめちまえ』って…。結構なパワーワードですね(笑)そう思うまでに何かあったのですか?
鈴木:自分がやるならいつ行ってもいつも通り開いていて、いつもの物がある安定感のあるお店にしたかったんです。
だから貸切とかもあまりしたくなくて。お客さんがいつもの感じを求めてきたのにいつもと違って貸切で入口の前で思わず立ち尽くしちゃうようながっかりをさせたくなくて。
ーーわかります!(笑)「自分が嫌なこと、やりたくないことはしない」ということでしょうか。
鈴木:例えば、自分ではそんなつもりないのですが愛想がないと言われることもあります。
人間同士だし、だんだん距離は縮まりますよね。だから、自然に逆らって自分から無理に距離を詰めるのは苦手なんですよね。
長く通ってくれていて、いつも決まったメニューを頼むお客さんがいるんです。あるとき、『今日ありますか?』って話しかけてくれるようになって。少しずつ会話を交わすようになったんです。
無理に詰めたような距離感ではなく、自然と詰まっていく距離感がうれしいんですよね。
ーー距離感を同じように考えているからこそ、ですね。
鈴木:お店と長く付き合ってくれてるお客さんはそういう人が多いです。
オープンした初日って、まだ何も定まっていないというか。お待たせしてしまったり、ミスもあったりしますよね。だけど、そういう状態のときから、今も通ってくれている方もいて。
ーー居心地が良いお店になれた、ということでしょうか。
鈴木:お店って、『その人の店』にどうしてもなるじゃないですか。私は「いらっしゃいませー↑」って感じでもないし。
私も自然体、
ソスイのInstagram活用方。iPhoneでも良い写真が撮れる
ーー話は変わりますが、Instagramがとてもステキだと思っていて。写真は自分で撮られているんですか?
鈴木:ありがとうございます。自分で撮って、毎日更新しています。
ーー差し支えなければ、撮影機材を教えてください!
鈴木:iPhoneで撮っています。セッティングとかもしていなくて、少しだけ加工をしています。
ーーiPhoneでここまで撮れるなんて…。Instagramを見て、実際に来てくれる方もいますか?
鈴木:『見てます、好きです。』と言ってくれる方もいますね。だけどそんなに面白い人間ではないので、すみませんってなります(笑)
あとは、『住んでいるところが遠くて行けないけど、更新を楽しみにしています!』などメッセージをいただくことも多くありますね。
関西の方が、わざわざ来てくれたこともありました。ずっと来てみたくて、って言ってくださって。うれしいけれど、『もう、そんな遠くから来なくていい来なくていい!近くにもいいお店あるでしょうからそちらでも』と思ってしまいます(笑)
ーー先ほど「毎日更新している」とおっしゃっていましたが、大変ではないですか?
鈴木:営業をしている日は毎日更新しています。正直、大変な日もあります。
毎日の更新を楽しみにしてる方がいらっしゃるので、大変だけど『更新しよう!』と思えます。それに、毎日更新しないと『今日投稿がなかったけど…』って心配されるんです(笑)
越谷でのこれからのビジョンは…ない?
ーー今後、「越谷でこうなっていきたい」のようなビジョンはありますか?
鈴木:想像できますよね…(笑)
ーーはい(笑)
鈴木:ないです…(笑)
ただ、こうなってみて思うことは、生まれ育ちが越谷なのですが、昔はカフェや喫茶店みたいなものが少なくて。
母と『近所にお茶ができるところがあればいいのにね』ってよく話していたんです。そして母も冗談で『あんたやればいいじゃない』って。高校生くらいのときですかね。
その後、関西に住むことになって。関西は喫茶文化が根付いているのだと感じました。喫茶店の数自体も多いし。
20年くらい前の越谷に住んでいたら、カフェに行くためにわざわざ都内へ行くということもあったので、昔から『ちょっとそうじゃないな』と思っていたんです。
わざわざ行くカフェではなくて、家事が終わったから行こうかなとか、暇だから遊びに行こう、みたいなお店にしたかった。だから現状、そういうお店になっていたら良いかな、と。
ちなみに、「ソスイ」っていう店名は、京都にいたときの経験からきているんですよね。
店名をどうしようって考えていたとき、家から店まで来る時に通った用水路沿いの道が京都に住んでいた時に通っていた鴨川疏水沿いの景色に似ていたんです。
疏水は用水路の意味です。そこでピンときて、気に入った景色だった「ソスイ」がいいなぁと。越谷にもそういう風情ある場所があるんですよ。
今後のビジョンとしては、どうしてもこうなりたいとか、全くなくて。
とりあえずいつもの感じが、ずっと続いていけばいいなって。こんな小さな店ですし。大したことはないけれど、細々と変わらず。いまのまま、できるところまでは。
未来のことはあまり考えていないけれど、いつもの感じを続けることが役割…というか。気に入ってくれた人が来てくれたらいいかなって思います。
今回お話をしたところ
〈企画・インタビュアー・文:吉川真緒 / 編集・撮影:藤田昂平〉
Sponsored Links
お問い合わせ CONTACT
KOSHIGAYAZINEへのご相談は、
お気軽にお問い合わせください。
担当者よりご連絡いたします。