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「人と街の可能性を広げる」ーー コミュニティカフェ「CAFE803」が“あらゆるチャレンジ”を応援する理由とは

「人と街の可能性を広げる」ーー コミュニティカフェ「CAFE803」が“あらゆるチャレンジ”を応援する理由とは

東武伊勢崎線越谷駅から徒歩約8分。今はあまり見られなくなった蔵の風景を残す日光街道に突如現れたオシャレなカフェが「CAFE803」だ。

外から見た限りではパンが並ぶベーカリーカフェだが、中に入ると驚いた。大きなブラックボードには周辺や店内で行われるイベントが並び、棚にはたくさんのチラシ。インフォメーションセンターの文字もあり、なんだかいろいろなことができそうだ。

店長の井橋由美さんに伺ったお話を交えつつ、CAFE803はどんな場所なのかレポートする。

3つの顔を持つベーカリーカフェ

CAFE803は「インフォメーションセンター」「コミュニティカフェ」「ベーカリーカフェ」という3つの顔を持つ。

越谷の情報発信を。「街のインフォメーションセンター」を目指してカフェをスタート

「インフォメーションセンターを作ろうというところから、この店は始まりました」

カフェのお店かと思いきや、もともとは越谷の情報発信を目的としてつくられた場所だと井橋さんは言う。

「昔は人がいっぱいいた日光街道も今は寂しくなっています。残したい建物も保存できず歯がゆく思っていたので、さまざまなイベントを企画しました。イベント自体は良かったのですが、ちょっとのどが渇いた、休憩したいと思ったときに入れるところが少なかったんです

確かに日光街道では少しずつ昔ながらの建物が減り、シャッターの降りた店舗や駐車場が増えている。店内から外を眺めていても通るのは車がほとんどで、歩く人はあまり見られない。

「気軽によれる場所があればと思っていた時、ちょうど大家さんがこの建物を使ってほしいと言ってくださったので、ずっとやりたかったインフォメーションセンターを作ることにしました。トイレがあればイベントでも使えると思ったのですが、せっかくなら飲み物もあると便利かも、じゃあちょっとした食べ物も欲しい、それならいっそランチもやってみたら……とやりたいことが広がっていきました。欲張りなんですよね(笑)」

インフォメーションセンターを軸にいろいろな方たちのアイデアや「あったらいいな」を組み合わせてできたのがCAFE803だと言う。インフォメーションセンターにベーカリーカフェ、そこにワークショップが加わり人をつなぐコミュニティカフェの要素も入った。多くが詰まっていても不思議と統一感があり落ち着くお店になったのは、「街を盛り上げたい」という芯があるからだろう。

店名の秘密。「八百喜 参の蔵」で803

カフェの名前は「CAFE803」。数字が店名とは珍しく、見ただけでは意図が分かりづらい。開店日が8月3日だから803……と予想したものの見当違いだった。

「オープン日は12月8日で、店名とは関係ないんですよ。803は私たちがお借りしているこの地にまつわる数字です。CAFEを開く前からここで開催されていたマルシェで使われていた蔵が、「八百喜(やおき)」という屋号の乾物屋さんが持っている3つの蔵、つまり「参の蔵」だったんです。そこから八百喜参の蔵、803(八・百・参)と名付けました。

店名にも越谷の蔵への思いが込められていた。

説明がないと分からない店名にも関わらずどこにもヒントがないため、気になってスタッフに声をかけるお客さんも少なくない。

「これもスタッフとのコミュニケーションを始める仕掛けなんですよ」

いたずらっぽく笑う井橋さん。私は見事に仕掛けにかかり、楽しいコミュニケーションへとつながった。

「こだわりはない」からこそ毎日楽しめるパン

ベーカリーのラインナップは来るたびに替わる。スイーツパンにおかずパン、30種類ほどが並んでいて、優柔不断な私はなかなか決められない。

「その日に入った材料で作るので、メニューはそこまでしっかりと決めていません」

地場野菜や井橋さんの家族が作った無農薬野菜などを使っているそうで、その日においしく食べられるものを出していくと言う。

取材をした日にいただいた日替わりランチには特製ピクルスやココット、にんじんしりしりなどたくさんの野菜が使われていた。自慢の特製ピクルスは爽やかな甘みと酸味でいくらでも食べられそうだ。

「ピクルスはお客さんからの評判も良いです。作り方は秘密ですよ(笑)」

「出してダメならやめればいい」大事なのはチャレンジする気持ち

「ピクルスもそうですが、ここのメニューはスタッフのアイデアでできています。こうしなきゃいけないというものはなく、とにかくやってみようという感じ。ダメならやめればいいんですから。失敗なんて気にしません。これやってみたいというアイデアを形にして、おいしかったらお客さんに出してみよう。そうやってメニューを作っています。」

パン、カレー、サラダ、スイーツ……広がるメニューにもどこか統一感があるように感じる。自然とスタッフの価値観が収束しているのだろう。

スタッフの中にはもともとお客さんとしてお店に通っていた人も多いそうだ。それぞれがCAFE803の持つらしさやビジョンを理解しているからこそお店に合ったアイデアがたくさん出る。そして店長である井橋さんも「どんどんやってみよう」というスタイルでお店のイメージを作り上げていく。

チャレンジ精神を育む理想的な職場であり、そして常に変化し続けるベーカリーカフェいつ来ても新しい楽しみが見つけられそうだ。

インフォメーションボードで越谷のイベントを知る

お店の中央にある大きなブラックボードにはCAFE803の周辺で行われるイベント情報が書かれている。たくさんのチラシも置いてある。お店からちょっと足を伸ばして行ける範囲に絞っているようだが、それでも毎週のように何かしらイベントが行われており、住んでいても知らないことは多いと気づかされる。

「トイレのためだけに入ってもらってもいいと思っています。だからスタッフはいらっしゃいませとは言いません。こんにちはと声をかけ、気軽に入れる場所づくりを心がけています

道を聞きに来る人もいて、駅やお店の案内をすることも。インフォメーションセンターでありカフェであり。人と街をつなぐ場所に近づいてきている。

ワークショップで人と街がつながる

CAFE803のもうひとつの大きな特徴がワークショップ。取材をした11月もびっしりとワークショップやイベントの予定が書きこまれていた。クラフト系のワークショップに限らずちょっとした講座やコンサートなども多いようだ。お店の奥にはシステムキッチンもあり、料理教室も開かれる。

ワークショップはオープンな雰囲気で参加しやすく

ここで開かれるワークショップの特徴は完全にオープンで遮るものはないということだ。お店のお客さんもワークショップの様子が見られるようになっている。

「公民館やスクールだとドアを閉めてしまうので参加者しか中が分からない。それだとコミュニティは生まれません。たまたまお店に来たらワークショップをやっていて興味を持つ。ワークショップを通じてカフェのお客さんになってくれる。ワークショップ同士がお互いを認識してコラボするなんてこともありました。そうやって人をつないでいく場所にしています。しきりのための引き戸もあるんですけど、閉める人はほとんどいませんね(笑)」

発表したい人、教えたい人と学びたい人をつなぐワークショップ。CAFE803ではそれにとどまらず、さらにカフェやベーカリーのお客さんを巻き込んでコミュニティにつなげる。お客さんもお店も参加者にもメリットがある、まさに三方良しの空間だ。

老若男女、チャレンジを受け入れてくれる

ワークショップやコンサートと言っても、主催側は初心者からセミプロまで幅広い。CAFE803は実力問わずやる気があればだれでも歓迎してくれる。 

「やりたいと思う気持ちが何より大切だと思います。先日も初心者の演奏者さんがコンサートをしたのですが、確かに腕前はまだまだなのかなと。でもお客さんも演奏自体は無料で聴けるのでクレームを言うこともありませんし、演奏者さんも『もっと練習してまたやりたい』と言ってくれました。大きなモチベーションになったそうです。発表の場を求める人は多いですが、場所や費用を考えるとなかなか難しいのが現実です。そういう人の力になりたいですね

チャレンジを受け入れることは創業支援や街の活性化にもつながる

ワークショップ用の場所やキッチンの貸し出しは格安だ。レンタルオフィスやレンタルキッチンとは違い、チャレンジへの応援とサポートを感じられるシステムになっている。(詳細はお店に直接問い合わせを)

なぜ多くの挑戦者を受け入れ、応援するのか。それにはお店のコンセプトが関わっている。

「もともとインフォメーションセンターを作るところから始まったお店ですが、根底には街を盛り上げたいという気持ちがありました。ワークショップやイベントから仕事が生まれるかもしれません。そうすれば創業支援になります。その人がお店を越谷に開くことになれば街が活性化しますよね。失敗が怖い、費用が不安……そういった理由で踏み出せずにいる人の背中を押し、街の活性化につながればと思っています。」

CAFÉ803も商店街の方たちによるイベントに参加したりとチャレンジを続けている。お店もメニューや内装など、話し合いを重ねて成長してきた。井橋さんにもお店にも経験に裏付けられた説得力と安心感があり、ワークショップでもチャレンジを受け止めてくれる。だからこそだれもが「挑戦してみよう」という気になれる。

越谷には『子供が胸を張って好きだと言える街』になってほしいんです

ビジョンは大きく明確だ。インフォメーションセンター、コミュニティカフェ、ベーカリー。CAFE803が見せる3つの顔も、すべてが街の可能性へとつながっている。

CAFE803は生活と近いカフェ。そして可能性を広げる場

店内を見て話を聞き、想像していた「おしゃれなカフェ」ではないことが分かった。一言で表すなら「可能性を広げる場」だ。

「観光で1度行ってみたいお店ではなく、生活と近いお店でいたいんです。パンもワークショップも、ここに来れば何かあると思ってもらえるような。何かにチャレンジしてみたいと思っている人には特に来てもらいたいと思っています。ふと何か始めてみたいと考えたときに思い出してもらえる場所になれると嬉しいですね。やりたいことがあれば一緒に考えて実現させたいですし、それが仕事につながったら言うことなしです。」

取材ライターとして訪れた私も、ちょっと何かを始めてみたいという気持ちにさせられた。

越谷という街を盛り上げる。そのためには自らが仕掛けて盛り上げていくだけでなく、チャレンジを受け入れて街全体を押し上げる役目も担っている。

漠然と何かを始めてみたい、街や人とつながりたいと考えているなら、一度CAFE803でティータイムを楽しんでみてはどうだろうか。おいしいパンを食べながらイベントやワークショップを眺めてみたら、やりたいことが見つかるかもしれない。

▽今回お話をうかがった場所

店名:CAFE803

住所:越谷市越ヶ谷3-3-16

営業時間:平日9:00~18:00 土日祝9:00~17:00

定休日:木曜日、第1,3月曜日

TEL:048-965-1803

URL:https://www.cafe803.com

〈インタビュアー・文: 高梨リンカ / 企画・編集・撮影:青野祐治

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