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メジャーリーガーにも愛される越谷の企業「ベルガード」。倒産後のピンチを救った起死回生の一発とは?

埼玉県越谷市の郊外にある野球用具メーカー「ベルガードファクトリージャパン」は、MLBのスター選手たちが愛用する防具を作っている。

前身の会社から80年を超える歴史を持つが、従業員はわずか4人。2012年に一度経営破綻をしたものの、そこから再起を果たし、今ではメジャーリーガーたちからオファーが殺到している。

今回は、その復活劇の理由と新たな注力領域について、ベルガードファクトリージャパン株式会社代表取締役社長の永井和人さんにお話しを伺った。

今回ご紹介する「KOSHIGAYA ZINE」

  永井 和人(ながい かずと)

 

1956年生まれ、東京都出身。高校卒業後、ベルガード・ファクトリージャパンの前身企業に入社。以来30年以上野球用具専門の職人として働いてきた。

聞き手:青野 祐治(あおの ゆうじ)

 

ローカルWebメディア「KOSHIGAYAZINE」編集長。1987年越谷生まれ、越谷育ちのパラレルワーカー。越谷西高→青山学院大学卒。 広告会社やフリーランス、スタートアップでWeb編集、スピーチライティング、PRなどを経験。 大の巨人ファン。

メジャーリーガーが「越谷製」野球用具を愛用する理由

ーーベルガードさんでは有名なメジャーリーガーも愛用する野球用品を製造・販売されていると伺いました。どういった選手が使われているんですか?

 

永井和人さん(以下、永井さん)私たちは、捕手が着けるマスク、プロテクター、レガースや、打者が手足につけるエルボーガード、レッグガードといった「防具」をメインに製造しています。

なかでも、打撃時の防具は、ロビンソン・カノ(シアトルマリナーズ)、ジャンカルロ・スタントン(マイアミマーリンズ)、ヨエニス・セスペデス(ニューヨークメッツ)など、現在約70人のメジャーリーガーに愛用していただき、9球団の4番打者(経験者)が使っています。

日本の野球界でも、名前は出せませんが、過去にトリプリスリーを達成した選手や外国人選手にも使って頂いていますね。

ーーなぜ、日本より先に、MLB で広まったのですか?

永井さん きっかけは十数年前。イチロー選手がマリナーズに在籍していた頃の専属トレーナーが私の知り合いで、彼を経由して、マリナーズの選手たちから「日本の防具を使ってみたい」とオファーがあったんです。

日本では、打者がデッドボールやファウルボールに備えて防具をつけるのは当たり前で、ほとんどの大手メーカーが打者防具を販売しています。しかし、米国では選択肢がほぼ、エボシールドというメーカー1社のみという状態。メジャーリーガーたちには「ボールが当たっても、痛くないふりをするのがカッコイイ」という、ある種の美学があるようで(笑)、打者防具をつけない選手も少なくありません。

米国は日本よりもFA(フリーエージェント)やトレードでの移籍が盛んですから、その時に用具を提供したマリナーズの選手たちが他球団に散らばって、徐々に知名度を上げていったという感じですね。

ーーなるほど。製品は全てこちらで作られているのでしょうか?

永井さん はい。防具はすべて日本製で、国内の職人が手づくりで製作しているんです。たとえばレガース(すね当て)の製作では、各箇所を熟練職人がミシンで縫い合わせてつくります。「当社の強みは『メイド・イン・ジャパンのクラフトマンシップ』だと思っています」。

商品には特注品と汎用品があり、特注品は選手個人の要望に、きめ細かく対応しています。

たとえば『打者のファウルチップのはねかえりが、(捕手用)レガースのつなぎ目に当たって痛い』という声が選手から上がれば、その部分を保護する防具に改良します。また、動きやすさや使い勝手から、素材やデザインを変えることもありますね。

それで、一流選手の中には、気にいってくれると契約更改時に『あのメーカーの商品を使いたい』と代理人を通じて交渉してくれる例もあるようです。そうなると翌年以降は球団から注文が来るんですよ。また、選手自身のSNSで、自らPRしてくれるケースもありますね。

最近はインスタグラムでも発信し、大リーガー本人や代理人からの依頼が増えました。総じて外国人選手は気に入ると、野球少年のように喜んでくれるんです。

ーーなるほど。エルボガードには、「ベルガード」と日本語で記されているものもありますね。

永井さん そうですね。うちのブランドは、まだまだ日本での知名度が低いので、国内向けの宣伝になればと。そうしたら、ある日本のアナウンサーが、MLB中継の実況で話題にしてくれたんです。また、2017年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック。野球の国・地域別対抗戦)でメジャーリーガーたちが使ってくれたおかげで、国内のアマチュア球団から多くの発注をいただきました。やっぱりテレビの宣伝効果はすごいですね(笑)

2012年、倒産を経て、越谷の小さな町工場で再出発

ーーそもそも、いつから越谷に拠点を構えられるようになったのでしょうか?

永井さん 2012年ですね。実は前身の会社が一度倒産しているんです。当時は都内の工場を拠点にしていたんですが、色々探した結果、この場所に行き着きました。もともとはバッグ工場として使われていたようです。

ーー倒産ですか…。

永井さん はい。先代社長までは家族で代々継いできた会社で、私は一社員でした。2012年2月20日、会社に行ったら、弁護士と名乗る人物から「今日で、この会社は終わりです」と突然告げられた。勤続30年を迎えた直後のことでした。

業績が悪化していることは薄々知っていたので、実は私自身、独立の準備で、開業資金を貯めたり、起業家セミナーに通ったりはしていましたが、あまりにも急で驚きました。

――なぜ、業績が悪化してしまったんでしょうか?

もともとベルガードは、野球防具に定評があり、大手メーカーが販売する防具のOEM(他社ブランド製品の受託製造)が売り上げのほとんどを占めていました。しかし、十数年程前から、大手メーカーが生産拠点を中国など人件費の安い海外に移転し始め、生産を受注できても中国の価格と比較されるようになり、OEMではなかなか利益が出せなくなっていたんです。

――独立を志されていた永井さんがなぜ、ベルガードを引き継ぐことになったんですか?

2月はちょうど春からの野球シーズンを控えたタイミング。すでに多くの注文を受けていたので、まずそれに応える必要がありました。また、経営破綻の直後に、ある韓国の企業から出資のオファーがあったのですが、その条件が、その企業の日本法人になることでした。

韓国企業の傘下になれば、ベルガードが持っている防具製造のノウハウが、海外に流出してしまいます。以前、防具の材料の製造を依頼していた台湾の会社が、うちの防具を真似して他に販売したということがありました。大手メーカーのOEMをやっていたときには、うちの防具と形状は同じで、材料は安いものを使用し、中国の工場に製造させていた、という苦い経験も味わいました。こう言ってはなんですが、アジア圏の国では、知的財産という概念がない、それが当たり前なのです。

倒産の負債を継承する必要はありませんでしたし、先代社長の息子さんは事業を継ぐつもりはなかったため、幸いミシンや材料を安く買い上げることができました。お客様から「ブランドをなくさないでほしい」という声を次々にいただいたことも後押しして、ベルガードを継承しようと決意しました。

―事業再建はどのように?

まずは、OEMを最小限に削りました。うちのような規模のメーカーは100%OEM、要は下請け専門という会社も多く、大手メーカーが海外に生産拠点を移した際に、軒並み倒産していったのを目の当たりにしていました。OEMは製造側の取り分が2割程度と薄利で、相当量を生産しないと割に合わないんです。会社を継承後は私と3人の職人のみに規模を縮小したので、大手メーカーからの依頼にはボリューム的にも応えることが難しいという理由もありました。ただ、審判用の防具など、国内ではほぼうちしか作っていないようなものは、一部受注を続けています。

もう1つは利益率の良い自社ブランド、とくに防具の強化です。倒産後に生き残れたのも、うちの防具のファンがいてくれたからこそで、防具の技術は国内屈指。今や大手メーカーの野球用具はほぼ海外製ですから、それに対抗するには、高い技術と材料にこだわって作る“メイドインジャパン”の防具に特化するしかない、と思いました。

基本的には半製品でストックしておき、注文が来たら作るという「受注生産」体制。注文から納品まで約2週間、特注だと1ヵ月いただく。「軽量」と「耐久性」を兼ね備えているのが特徴で、メジャーリーガーからも「他の防具より格段に軽くて動きやすい」と評価してもらっています。

職人の数が少ないので、大量には受注できませんし、「うちの商品をどうしても使いたい人に」というのが基本スタンス。値段も少々強気に提示していますが、業績は順調に推移していますね。

そして私を助けてくださったのが、旧知の取引先でベルガードブランドのファンの方達です。アンパイアショップを運営する元プロ野球審判員、ソフトボールの審判用品を販売する会社の女性社長といった人が注文してくれました。受注が増えると、旧会社のベテラン職人も3人入社した。フェイスブックなどSNSでの情報発信も、商品告知と売り上げ拡大に繋がりましたね。

――メジャーリーガーたちとはどのようにやり取りしていますか。

うちのインスタグラム(写真投稿SNS)にメッセージが来るんですよ。しかも本人から(笑)。フェイスブックはやっていたのですが、アメリカではインスタグラムのほうが盛んだとアドバイスされ、始めてみたところ、メッセージが次々に来るようになりました。

他の選手が使っている防具を見て「これと同じようなのを作ってほしい」と、その写真を添付してくることが多い。加えて野球中継を見ればその選手のサイズが大体分かるので、それを元に製造したものを現地に送付します。

届いたら、ちゃんとお礼のメッセージもくれるんですよ、絵文字付きで。まさかメジャーリーガーと“メル友”になれるとは思いませんでした(笑)。いつトレードになるなど、その選手の極秘情報が送られてくることもありますよ。

体を守る「防具」から、身体能力を最大化する「道具」へ

―最近ではコラボ商品も続々と生まれているとお聞きしました。

倒産から6年が経ち、ベルガードは「MLB選手が愛用する野球防具メーカー」と呼んでいただけるほどまでに成長しました。メディアへの露出も増えて、コラボレーションの依頼も大幅に増加したんです。

そして、我々がいま、最も注力するのが“パワーを生むウエア”を掲げた「アクセフ・ベルガード(AXF×Belgard)」というコラボ商品です。これは、アパレルメーカーのサンフォード(本社・岐阜県岐阜市、吉田國廣社長)から申し入れがあり、サンフォードと機能面でも技術連携していたテイコク製薬社(同・大阪府大阪市、畠山兼一郎社長。高齢者の転倒防止ベルトなども製作)との3社共同開発となります。

これも1つ面白い話しがあるんです。

―是非、お聞かせください。

昨年のWBC開催期間中に、あるキー局の朝帯の情報番組で、ベルガード製の防具について15分ほど取り上げていただいたんです。それで当時、コラボ先を探していたサンフォードの社長が「偶然」その番組を見ていたそうで、「これだ!」と思って、私に連絡をくださったんです。そこから、また新しい展開が見えてきました。

―そんな偶然があるんですね!ウエアを着ると、どういった効果があるんですか?

はい。このウエアを着ると「リカバリー」「バランス感覚」「体幹の安定」が向上するという機能性衣料の一種で、特許も出願中です。実際の機能性と効果は、商品を購入した人に判断を委ねますが、私自身が、国内外の出張や番組出演時などに関係者に紹介し続け、試着や実践した人からも好評を得ています。2017年11月に発売したウエアは2カ月で約1000枚売れました。この技術は野球用具(グローブ、バット、防具)にも応用し、「アクセフ・ベルガード」の新商品として、次々に発売していく予定です。

最近では、ネックバンドも発売しました。球界を代表するプロ野球選手も着用を始めたところ、急に成績が上がり始めるなど少し話題になりました。他にも、サッカー選手やラグビーの選手も「アクセフ・ベルガード」製品を使用し、効果を感じていただいているようです。

そういった形で、商品の評判は非常によく、注文も多いです。この効果をより多くの方に体感いただきたいので、今後は良識ある研究者や第三者機関の評価などエビデンス(根拠)を充実させて『信頼性の高い商品』にするのが課題ですね。

―世界を変える商品ですね。

今は、逆説的な言い方ですが『倒産してよかった』と思います。これからも頑張ります。

 

▽今回お話をうかがった場所

ベルガードファクトリージャパン株式会社

住所:埼玉県越谷市大間野町2丁目-194 

TEL:048-971-8646

URL: http://www.belgard.co.jp/

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